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第十一話 旅の目的

 野営を三度行い、順調に森を抜けていく。方向などは時折竜化して翼を生やしたアーノンを空へと風魔法で放り投げ確認してもらっている。


 本来は空を飛行して旅ができれば危険は少ないのだが、俺もアーノンも短時間飛行しかできない。竜化は修練によって持続時間と変身範囲が広がる。アーノンはそこのところはまだまだ。俺も風魔法にはあまり適正がないので飛行は難しい。せめて上級風魔法を習得できるようにならないとな。


「よっと、もう少しで街っぽいとこに着きそうだぜ」


「予定より少し早かったな。このサビ刀の錬成も必要だし丁度良い」


「競争するか?」


「竜化してもいいぞ。よーいどん」


「あっ!ずりぃ!!」


 こういう時、アーノンは必ず何か賭けようとしてくる。なので即答で乗って、確実に勝ちを奪うのが大事なのである。


「身体魔法三連エンチャント……成功。風魔法で補助……よし。邪魔な魔物は氷漬けでいくか」


 身体強化を三段回施し、風魔法で進行方向を補助し、出てくる魔物は近づくだけで凍るように魔法を使っておく。ああ見えてアーノンが推進力だけに集中したらかなり速度が出る。どうせ魔物や障害物はぶっ壊しながら突き進む猪突猛進スタイルでくるんだろう。


「まてぇい!俺だって成長してるんだぜい!」


 その声が聞こえたと思うと真横にアーノンが付けていた。


 ほう、火属性魔法と竜化の翼を組み合わせてジェット噴射で進んでるのか。燃費は悪そうだが推進力だけなら大したものだ。アーノンも火属性魔法だけなら上級に届くレベルだ。


「だが負けん!!」


「ぬおっ!?」



 それは氷の竜の翼。冷気を発する翼を装着し、風魔法で推進力を生み出し、アーノンと同じように滑空する。龍眼のお陰でかなり視力や動体視力が上昇しているため、このスピードの中でも簡単に木々を避けいける。


「「おおおおっ!!!」」


ーー


魔帝国リスカロン領【ポーンの街】


 魔帝国は文字通り魔帝と呼ばれる王が治める国で、人種はほとんどが魔人族。人間や亜人種もチラホラ見かけるがそこまで数は多くない。いても手練れの冒険者か金持ち貴族くらいだな。


 そんなアウェーな国ともいえる魔帝国に俺達は踏み込んでいた。身分証は群集国家発行のものがあるし、後は冒険者資格は冒険者ギルドにでも行って取るとしよう。


 門番に特に止められる事もなく、ポーンの街へと入った俺達はとりあえず拠点とする為の宿を探していた。


 良さげな宿を見つけたので、地図を確認しながら歩いていく。



「……まさかアーノンに負けるとはな」


「へへん、俺だってただ修行してる訳じゃないんだぜ?魔法じゃ絶対勝てないけど、こういう身体能力勝負は俺の領分さ」


『主人が負けるとはのう……さ!罰ゲームじゃ罰ゲーム!主人が顔を歪めるくらいキッツイのをお見舞いするのじゃ』


「てめえ……覚えてやがれ……!!」


 ギチギチと音を立ててクリカラーンの柄を握り締める。テレパシーでクリカラーンの『やめてたもう〜』と叫び声が聞こえたが無視だ無視。


「で、何にする?夜飯おごりか?」


「いや、それはまた今度で、質問に答えて欲しいっていうのが今回の罰ゲームだ」


「質問……か」


「うん。じゃあ聞くぞ、『この旅の目的は何だ?』」


 いつになく真剣な表情のアーノン。

普段は能天気な雰囲気を見せるが、こう見えて頭は切れる方だし、昔からの付き合いだからか誤魔化しも効かない。


「……そうだな、アーノンには言っておく必要があるか。とりあえずは宿の部屋を取ろう。道端で話すような事じゃない」


ーー


 宿に到着した俺達は部屋を取ると荷物を置き、一息つく。相変わらずクリカラーンのやつは腹が減ったなどとうるさいが、冷凍保存してあったポーンポークの生肉に刀を突き刺しておけば大人しくなった。『解凍してほしいんじゃあ〜』と言っているが。


「さて、旅の目的だよな。俺が村の食生活に不満を覚えているのは知ってるだろ?」


「うん、竜人族は生肉とかの方が好きだからね……でもそれだけじゃないのは分かってるよ」


 アラヒト国がこの世界では一番の発展国で、その食文化も前世で食べていた料理に近いものらしい。文献で読んだだけだが、料理のレパートリーも和食洋食に近いものと様々にあるみたいだった。


「……だいたいはお見通しだろうが、爺さんの仇だ」


「じゃあやっぱりガレリア元村長は……!」


「ああ、カムイが殺した。村の人には犯人の姿は見てないと伝えてるが……あれはカムイだった。俺にこのサビ刀を刺したのもな」


 見間違えるはずもなく、俺の龍眼はあいつを捉えていた。俺が知っているカムイより異常な程、膨大な魔力を放っていたが、おそらくあれが本当の実力だったのだろう。


 村でカムイに修行に付き合ってもらった時、あいつは一度も実力など見せた事がなかった。


「カムイさんが……じゃあ旅をしながらカムイさんを探してるってわけだよな」


「そういう事だ。あいつがこんな事しなかったらすぐにアラヒト国に向かってるんだけどな。とりあえずカムイはどこに消えたか全く見当がつかない。その為には大国で冒険者をするのが手っ取り早い」


「冒険者ギルド独自の情報網か……たしかカムイさんも昔は冒険者を軽くしてたみたいだよ」


「そうだ。おそらく知り合いもいるはずだ。そこからカムイへの手がかりを得る」


 カムイの昔の事に関しては兄弟なのにほとんど知っていない。頻繁に村を留守にしていた事くらいだ。帰ってきては時折俺の修行を見たり、村の手伝いをしてまたすぐに旅に出かけていた。


「……で、見つけたらやっぱり……」


「ああ、命までは取るつもりはない。ガレリア爺さんはそんなことは望まないだろうからな。でもとっ捕まえて償いをさせてやる。村の牢に死ぬまで入れられることになろうがな」


 殺人は重罪であり、それも身内なら倫理的にもさらなる加重があるかもしれない。ただ、あの時のカムイはガレリア爺さん以外にも手をかける……そんな雰囲気を醸し出していた。


「放っておけば他にも被害者が出るかもしれない。ボロス村では村長達が秘密裏にカムイを重要参考人としてマークしているから、カムイも近付くことはないと思うが、他の街で何をしでかすか分かったもんじゃない」


「あのカムイさんが無差別に人を殺すなんて思えないけど……」


「それは俺も同感だ。でも事情があるしても殺人を選択したんだ、奴が再び同じような手を使う事を念頭に置かないといけない。わかったか、この度は正直危険なものになる。アーノンが嫌だというなら途中で離脱してくれても構わないが」


 俺としてもアーノンを巻き込む必要はないと思っている。戦力としては優秀だが、死のリスクがある旅に無理に参加しろと言うほど俺は鬼ではない。


「いや、それでも俺はついていくよ。カムイさんを止める。カムイさんにはお世話になったからね」


「……そうか。悪いな」


「任せなって!」


 トンと胸を叩いて笑うアーノン。

カムイはボロス村で最も優秀だと言われていて、それは弟の俺よりアーノン達の方がよく知っているはずだ。超巨大魔獣ですら一人で狩ってくるような男を敵に回すのだ。


 そういう事も含めて任せろと言っているのだ。


「よし!じゃあ当面の間は情報収集といくか。とはいえ、カムイの事ばっかり追ってても仕方ない。サビ刀の錬成だったり冒険者業もある、気楽にいくぞ」


「おうよ!」


『了解なのじゃ!』


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