第九話 龍人と龍神刀のステータス
二人と一本で旅に出た俺たちであったが、まずはボロス村から近い【魔帝国リスカロン】の郊外に位置する街【ポーン】を目指していた。そこで軽く準備を揃えて人間の国【アラヒト国】に行く計画だ。
うちの村はその二つの国ではなく群集国家という集落が集まって同盟を組んでいる国家に所属している。手持ちの資金はそこまで多くないが、魔帝国リスカロンでも冒険者登録はできるので、そこで軽く稼いで準備を整える算段だ。
ついでに村からポーンの街へ向かう途中で魔獣を狩って資金の足しにする目的もある。
とはいえ、ポーンの街へは広大な森を抜ける必要があるので3日は野営が必要となる。
俺たちは特に魔獣の気配もないので、クリカラーンの能力などを試しながら旅を続けていた。
「どれ、まずは俺のステータスから確認してみるか。といっても大体は把握してるが」
『予想外に能力が低くても落胆するのではないぞ〜』
「レイは氷属性魔法を極めてんだぜ?そんな能力が低いわけないって」
ニヤニヤとした雰囲気を出すクリカラーンと何故か自信満々なアーノン。
俺は手元のステータス表を確認した。
ーー
【レイボルト=ボロス】
種族:龍人(転生者)
レベル:62(レベルアップまで経験値850必要)
魔法:上級氷属性魔法、中級全属性魔法
固有スキル:龍眼
恒常スキル:ステータス
装備:錆びた龍刀、その他防具(下位レアリティのため無記名)
その他:龍神の加護(極弱)
【錆びた刀】
種族:刀
レベル:5(レベルアップまで経験値2050必要)
魔法:無し
固有スキル:テレパシー、所有者絶対権限、成長
恒常スキル:龍神の加護(極弱)
その他:元龍王の称号
ーー
『ずるいのじゃ!!!!』
「ど、どうしたんだよクリちゃん」
ステータスを閲覧すると同時にクリカラーンが喚き始める。アーノンにはステータスが見えないから状況が分からないのだろう。
『おかしいのじゃ!私は龍神刀じゃぞ!?なんで錆びた刀になっとるのじゃ!!』
「どこから見ても話す錆びた刀だろ。ほら、俺のステータスに錆びた龍刀って書いてるぞ?一応龍の刀って認識されてるじゃないか」
『いやじゃあ〜私は龍神刀なのじゃあ〜!しかもレベル5じゃ!』
「レベル5?それってどうなの?」
「俺の12%くらいの強さ」
「よくわかんね〜魔獣で言うと?」
「ポーンスライムくらいじゃないか?」
「めちゃよわ!」
ステータス魔法は自身以外には使う事ができないため、数字と実際の状態を比較するには実戦を経験してみるしかない。俺が苦戦すれば同じくらいのレベル、楽勝ならかなりレベル差がある、くらいにしか分からないだろうが。自分の成長を確認できるのは嬉しいことではあるが。
ちなみにポーンスライムは村の子どもが初めて狩りに出かけて戦う練習相手として有名だ。
「所有者絶対権限、あれか俺から離れると急に重くなる呪いのことか……こうなってくると別にクリカラーンを育てるメリットが分からねえと使う意味がないな」
『な、そ、そんなこと言わんでくれよの?私も元龍王といって龍神国の王じゃったのだぞ?育てれば強いんじゃぞ?後生だから育ててくださいご主人様!』
「レイ、クリちゃんも頼んでることだし使ってあげようよ。もしかしたらすっごい名刀になるかもしれないだろ?」
仕方ないな。龍神の加護は(極弱)とはいえ、龍人である事を隠すのに役立っているし、育てざるを得ないか。
「まあ眼鏡も作ってくれたし使ってやるか」
『さすがは我が主人なのじゃ!』
こうして俺たちは自身のステータスを確認し、旅を続けるのだった。