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五話


 【ギルド】。


 それは全世界が周知する国際的な組織の名称だ。


 【ギルド】を知らぬ者はこの世にはいない。


 その【ギルド】に認められた者達を【探求者(シーカー)】と呼ばれている。


探求者(シーカー)】にも様々だ。


 未知なる動植物を探求する為に決して人が入れぬ未開の土地へ赴く者。或いは力を追い求め、戦士や騎士として殺し合いに興じる者。未だ味わったことの無い“食材”を狩る為に死地へ向かう者。金銀財宝を求め、海や山等危険を顧みずに探索する者。


 どれもが欲――――――いや、夢を求められる世界各国・この世の宗教が認めた組織である。


 しかし、【ギルド】の【探求者(シーカー)】として入るのは容易では無い。


 何せ三年に一度ある試験。


 加えて【探求者(シーカー)】になろうとする者達は全世界からやってくる。


 しかも毎年、【探求者(シーカー)】になろうとした受験生達の4分の1は死亡しているのだ。それは老若男女問わずに。しかも年齢制限等もありはしない。更には受験生は決して“人である(・・・・)必要もない(・・・・・)”のだ。


 例え、この世から迫害された種族であろうとも。


 例え、二足歩行ではなくとも。


 例え、異形な姿であろうとも。


 ただ、人の言葉を理解(・・・・・・・)人の感性があり(・・・・・・・)人と同じく生きる(・・・・・・・・)覚悟があるのならば試験は受けられるのだ。


 しかし、残念ながら試験とは言え必ず合格者が出る、訳ではない。だがそれでも【探求者(シーカー)】になる為に三年に一度行われる試験者の数は衰えることは無いのだ。


 理由は簡単だ。


探求者(シーカー)】の中に、世界に影響を与える存在が多く存在するのだから―――――――。



▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼



【ギルド】総本部。


 その最上階にある雲を見下ろせる(・・・・・・・)開放的な屋上に一人の人物が黒スーツに身に纏い立っていた。しかしその黒スーツは初対面ならばその比較的に幼い容姿では不釣り合いに見え、違和感を感じざる負えない。


 しかし、強者ならばわかるだろう。


 幼気な少年か少女かわかりづらい容姿に華奢な身体。しかし、未成年にしか見えない人物は計り知れない何かがあると。



 「相変わらずいい眺めだな、“ギルド理事長”」


 「あ、来てたんですか“魔王”さん」


 

 その人物この【ギルド】の“ギルド理事長”である彼の背後から音も気配もなく現れたのがこの世界に一人しかいない“魔王”その人だ。容姿は中性的で紅蓮の左眼と黄金の右眼が特徴的だ。あと“魔王”なのに世間が思い浮かべる“勇者”や“騎士”な格好もだろう。



 「来るのをわかっていたからこそ、ここで待っていたのだろう?」


 「いえいえ、気分転換に外へ出てただけですよ」


 

 “魔王”は心の中で抜かせ、と忌々しい老害を見るかの如くギルド理事長を目で細める。すぐにそんな思考を読んでいたギルド理事長は特に気にする事なく、“魔王”である彼の趣味と言うべき事について尋ねるのだ。



 「“魔王の財宝”の探索はどうですか?」


  

 “魔王の財宝”。


 それは、かつて前“魔王”が手に入れた金銀財宝だ。しかもこの世のあらゆる場所に隠した、とされておりその中には世界を滅ぼす終末兵器アポカリプス・ウェポンもあるとされている。更には兵器だけではなく、幻の霊草や神を殺す武器に国をも滅ぼす空中要塞や空陸海を駆ける聖獣等も含まれているのだ。“魔王の財宝”を探す事こそが、この“魔王”の唯一の趣味である。



 「一つも無かったな。つまらん場所だった。暇潰しに不要な物(・・・・)をそこらにバラ撒いておいた。欲しくば己の力で手に入れるがいいさ」


 「不要な物……また何処かにあなたにとって必要ない“魔王の財宝”を何処かに隠したんですね」


 「当たり前だ。我も手に入れるのに苦労したのだぞ」


 

 “魔王の財宝”は簡単に手に入るものではない。


 国々がそれを手に入れる為、軍事を用いても尽く阻止されてきた。雲を穿いた山脈や地底湖、火山や古代遺跡に神殿等、普通の人やモンスターが寄り付かない。或いは入る事すらできない場所に眠っている。何故そこに“魔王の財宝”が隠されたのか。どういう意図があったのかは不明だ。


 そしてその“魔王の財宝”を最も有しているのが、今の“魔王”だ。そして己が気に入ったもの、必要なもの。己にとって価値あるものは手中に収めるが、それ以外は同じ場所に戻すか。或いは魔法で何かしらのトラップを仕掛けた空間等を作り放置する。それが“魔王”のやり方だ。必要ないとは言え苦労して手に入れた財宝を簡単に手放す気はない。欲しいのならばそれ相応の力を示せ、という訳である。勿論それほど大したこともないものであればそれ相応の価値でオークションに出品するのも稀にあるが。



 「そう言えば、だ。滅んだぞ、『ジギタリス王国』」


 「……“魔王”さん。幾ら退屈とは言え国を滅ぼすとか」


 「断じて我ではないわ、戯けっ!我ではなく“龍王”や“獣王”に“鬼王”の輩が滅ぼしたのだっ!我はただ奴等が何故その国を襲ったか興味が立ち寄ったのみっ!」


 「じょ、冗談ですよ。しかし、滅びましたか『ジギタリス王国(あの国)』。いつかは滅ぶ(・・・・・・)とは思いましたが……」


 「興味ないがな」 


 「いや“魔王”さん。あなた一応【探求者(シーカー)】のトップランカーなんですから。世界各国(・・・・)宗教(・・)が認めた(・・・・)探求者(シーカー)】ですから、せめて興味くらい持ってもらっても」


 「我が“魔王”となってから『ジギタリス王国(あの国)』には敵視されていてな。我チョームカつくからざまぁみろ位しか思ってない。むしろいいぞ、もっとやれって感じだ」


 「気持ちはお察ししますが」



 こめかみに血管を浮かび上がらせる“魔王”と『ジギタリス王国』とは前々から相容れない仲だったのだろう。しかもギルド理事長の様子から察するにかなり酷いものだったのが伺える。その理由としてはやはり、“魔王”だから、だ。“魔王”だから『ジギタリス王国』から敵視されており、更には何度か襲撃されたこともある。だからこそ“魔王”は聞く耳も持たない『ジギタリス王国』には手を貸すことはない。



 「“魔王”という名を冠する(・・・・・)あなたは世界最強の存在を意味してます。それは我々ギルドが与えた最強の称号。あなた以外が名乗るのは既にこの世を去った歴代の魔王(・・・・・)を除いて許されるものではありません。それは紛れも無い事実」


 「そんなこと、わかっている」



 “魔王”。


 この世でたった一人しか名乗ることを許されぬ称号だ。仮に許されるとしてもかつて“魔王”と恐れられた今は亡き歴代の“魔王”達のみ。だからこそ、下手に“魔王”という言葉を使う事さえ人々から、モンスターから憚られる。それ程、畏怖される存在だ。



 「まあよい。そう言えばあの老兵(・・・・)はどうした。奴に酒を持ってくるように朝から何度も連絡があったのだが」


 「あのクソジ―――――ギルド長ですか。全く酒癖が悪い人ですね。後でちょっとシメテキマス」


 「我を巻き込むなよ」

 

 

 どうやら要らぬ事を言ったかもしれないと察した“魔王”は予めギルド理事長に釘を刺しておく。こういうことは何度もある日常の一部だ。特にギルド長に関しては日頃の行いが悪かったと思ってもらうしかない。この後何が起こるかは、ここまで言えば誰もが容易に想像出来るだろう。


 そして何か良いアイディアを思い付いた仕草をしたギルド理事長は“魔王”に言うのだ。



 「あ、“魔王”さん。よければ次期ギルド長になりませんか?」


 「ならん。あんなの面倒なだけだろう」


 「ぷー」



 お強請りが失敗してむくれた子供の様に頬を膨らませるギルド理事長。残念ながらは歳相応、な訳がない。ギルド長よりも、“魔王”よりも歳上なギルド理事長は世間で言う《ショタ爺》だ。


 そうこうしていると、その場に気配も音も無く現れた者が一人。


 その者は白い狐のお面を右即頭部に付け、口元を黒い布だ隠し、着物の様な服を着た武士だ。身の丈よりも背の高い大太刀を腰に背負い、右手には錫杖(しゃくじょう)が握られていた。10から20代前半だがこの者も中性的で、何より耳が尖っている(・・・・・・・)。線も細く、その種族特有な(・・・・・・・)女性よりの中性的(・・・・・・・・)な容姿。



 「…………」


 「ほぅ?まさか“精霊(・・)”である貴様がここへ来るとは珍しいな―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――アレン(・・・)







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― 新着の感想 ―
[良い点]  更新ありがとうございます。  アレンが精霊になって存在している……  うーん、まだまだ謎だらけで、気になります。  うなりながら、次回を待ちます。
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