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一話



私は死んだ。


しかし、徐々に薄れ消えていった意識がまるで蝋燭に火を灯されたかの様に私の意識が浮上していく。


最初は無から身体中に生暖かい感覚が駆け巡り、次に急激に煉獄の如く灼熱な熱を身体の芯から発せられ苦しみにもがいてしまう。どれだけもがこうが、その苦しみは逃れなれない。だが、暫くして急激に温度が下がった様に身体が震え出す。しかし、身体という身体は失って魂だけになっている筈なのに不思議と四肢の感覚はあったのだ。


そして、ゆっくり、ゆっくりと、深海に沈められた冷たい空間から引摺り上げられる様な感覚に陥ってしまう。



「っ!」



気付けば、私は倒れていた。


しかも、見知らぬ場所で───。



いや、知っている。


ここは、屋敷の中。


その屋敷の書斎室だ。



「これ、は……ぇ?」



ぐちゃぐちゃと頭の中が混ざり合う。


スカサ(わたし)と、もう一人のわたし(・・・・・・・・)が、混ざり狂う。



「うそ、だ……これは……なぜ……」



私は───私は、『クロバ(・・・)エーデルワイス(・・・・・・・)』。


三大貴族の一つエーデルワイス家の次女であり、現在14歳。先程まで、私はとある書物(・・・・・)を閲覧して何故か期限を目眩を起こし、気絶してしまったのだ。



「……まさか、生まれ(・・・)変わった(・・・・)?」



それしか、考えられない。


生まれ変わり───つまり、転生だ。


私───スカサは、クロバへ転生した。


意味がわからない。


何故、私は、転生した。



「……ぁ」



目の前に読もうとしていた本が視界に入ってしまう。その本はクロバである私が初めて読もうとした本。それは大昔に実際にあった神話(・・・・・・・・)スカサ(・・・)神話』。


それをゆっくりと、静かに目で読んでいく。



▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

【スカサ神話】要約すると……

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

とある村で女の戦士が生まれた。


女戦士の名をスカサ。


人を超越した者なり。


数多のモンスターを撃ち破った10の頃、スカサは『ジギタリス王国』の騎士として迎えられた。


スカサは人々に恐れられしモンスター『スサノオ』・『ラー』・『ロキ』と呼ばれる三体を討ち取り、人々から"剣聖"と呼ばれることとなる。


彼女は、"勇者"の婚約者として人々に憧れ慕われていった。


"勇者"と共に結婚したスカサであったが、そんな幸せな時に魔の手が忍び寄る。


ある日、スカサは"魔王"によって連れ去られてしまう。王国の民を人質にされてしまった為だ。


"魔王"に連れ去られたスカサであったが、何れだけ屈辱されようと決して屈する事はなかった。


そして、隙を突いてスカサは"魔王"を己の素手で討ち取ったのだ。


"魔王"の名は、"アレン(・・・)"。


エルフの"魔王"であり、その他の同族たるエルフ達をスカサの婚約者である"勇者"と他の仲間と共に殲滅させたのだ。


そして"魔王アレン"の遺体は、無尽蔵に満ち溢れる膨大な魔力に目を付けた賢者が、"魔王アレン"の身体を顔・胴・左腕・右腕・左脚・右脚、そして、心臓の7つに分けて魔力の動力源としたのだ。


顔は賢者に。


胴は教会へ


左腕は魔導宮廷師長に。


右腕は王族へ。


左脚は三大貴族の一つ『グラジオラス』公爵家へ。


右脚は三大貴族の一つ『カルミア』公爵家へ。


心臓は三大貴族の一つ『エーデルワイス』公爵家へ。


それぞれが無尽蔵に生み出す魔力の宝庫として現在でも保管されており、それを盗み出せる事は不可能である。


そして、剣聖スカサは魔王アレンを討ち取った後、力尽きてしまう。


しかし、彼女の亡骸は今でも国の宮廷で保管されているのだ。彼女は長年の時が経った今でも腐敗、朽ちる事もなく美しい姿のままである────。


───────。


────────────────。



▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△



なに、これ……は?


こんなの、出鱈目だ……。


アレンが、魔王……?


そして前世のわたしの名前。


出生や産まれた故郷、そして家族やかつての同僚の名前やその経緯も同じ。


この神話に出てくるスカサは間違いなく私だ。


何故、どうして!?


なぜ、なぜ、アレンが魔王!?


そして───あぁ、殺されてしまったの……。


あの後(・・・)


(スカサ)が死んだ後、何が起こった!?


そんな、こんなのって……ないよ……。


広げたスカサ神話の本のページに私の涙が溢れて濡らしていく。


ふざ、けるな……。


ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなァァァァァァアあ!!!!!


何でアレンが死んでしまう!?


なぜ、殺された!?!?


殺したのは、私じゃない!


あいつら(・・・・)だ……!


あいつらが、アレンを、殺したんだ!!!!


嗚呼、何故私は!!!


アレンを、一人(孤独)にしてしまったのだ!!!


あいつらは、アレンを邪魔者だと思っていた筈なのに……!


何故、私は彼より先に死んでしまったのだ!!!


何故、私は死んだ!!!


彼を裏切っておきながら!!!


彼に尽くされていたのに!!!


私は!


私は!!!


何も。


何も、返せては、いないではないか……。


何一つ、償っていないではないか!!!


しね、わたし!!!


この愚か者のわたしが!!!


しねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしね!!!!!


くそっ!


私は、また間違いを犯したんだ……。


こんなわたし(愚者)は死ねば良い。


けど、死ぬわけにはいかない。


アレンの身体を利用している糞共を皆殺しにして、彼を取り返すまでは、死ぬわけにはいかない!!!


だが、今の私は運が良い。


私は、『クロバ・エーデルワイス(・・・・・・・)』。エーデルワイス公爵の次女だ。


三大貴族のエーデルワイス公爵───つまり、アレンの心臓を保有している。


前世の記憶が蘇る前に、彼の心臓の在りかは父から聞いているのだ。アレンの身体があるからこそ、三大貴族やその他の組織の魔力貯蔵が桁違いにバケモノ地味している。


我が親愛なる両親よ。


我が心優しき立派な兄と姉よ。


私は貴殿方という家族に出会えて幸せでした。


だから───。









アレンの為に、死ね。











▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

スカサ神話:最後の謎

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

しかし、賢者は唯一『魔王アレン』の()は手に入れる事は出来なかった。


だが、この世の何処かにそれは眠っている筈。


『魔王アレン』は数々の場所にいた事もあり、その何処かに己の力を隠し封印していると考えている。


▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△


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