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19・新しい発明品

 




 校庭の端に到着。

 を切り替えたーーーー


 ーーーーーー

 ーーーーー



「で、今日は新発明をするわけなので!」


 俺の声に、むすっと頷くユイ。

 しかめ面だけど、距離は近くて、話にもきちんと耳を傾けてくれている。

 なんなら俺の服の端をちょんとつまんでいて、なんともはやな気持ちにな……る……。


 あーーーーよかった! 本当に良かった! 今日を迎えられて。明日も迎えられそうで。あなたと。

 どうしようもなく心臓が鼓動するままに、目を光らせる。


「ユイ。有意義な1日にしましょう!」

<……ハジメ? ハジメ 違う?>

「……」


 ユイを混乱させているのはそこだと、分かってる。


 このユイが出会ったのは、もうひとつの人格のほうだから。

 穏やかで人柄がよくて優しい、弱くて、だからこそユイが安心して近寄りやすい存在。

 そのように、俺が俺を俺とユイのために分けた・・・から。


 今、ユイが目にしている俺は、ユイにとっては得体がしれなくて怖いものなんだろう。そう思う。


 ユイのためなら、解決したい。

 最優先はあなただから。


「光くん、とか、分けて呼んでくれてもいいですよ」

<ヒカル?>


 ユイの瞳がゆらゆらと俺をとらえて、ようやく浮かんだひかえめな笑顔が、胸にぶっ刺さるくらいに素敵だった。


 世界がきらめいてみえる!

 こんなに素敵なものは、なんとしても守ってあげなくちゃね!


 ──頭の中に火花のような閃光、それから俺はユイを連れて倉庫に赴き、保管してある機材で電磁波スタンガンを作り上げた。



 ユイが不思議そうにブレスレットを眺めている。


「それ使うと、ロボットたちがオーバーヒートするから。取り扱いに気をつけてね」

<わ わかった? 気をつける うん……>

「ユイを守ってくれる強力な手段だから」

<???>

「まあ、使うべきところを知ってくれているなら、俺は満足。最終手段を与えられてよかった!」


 ユイが固まった。


 ……後ろから強烈なチョップが落とされた。

 両肩に。


「あいたっ!? 関節壊れるかと……思ったッ……!」

「ハジ……ヒカルくん、君ってやつはー! なんで最初から危険な最終手段を与えちゃうのかな!?」

「自衛道具をいくつも持たせるなんて、普通の学園生活とは言えなくなっちゃうだろ? 幸せプランが台無しになるじゃん」

「今回の工作、思いつきにしては、よく材料が足りたな? ヒカル、もしかして準備していたか……?」

「当たり。ちょこちょこと今日まで、ね」


 モモが「ほーう」と低い声。


「……それって。今まで君が侵入してた箇所とかに? 準備を? 罰則999回分??」

「物事には入念な準備をってね」

「開発品、実は999点じゃないんだろう」

「カウントされているのは目くらましのフェイクだよね。本当に大切なものは隠しておきたいじゃん」


 ヒフミとモモが、ユイを眺めた。

 うん、本当に大切で隠しておきたいもの。

 それでも幸せになってほしいもの。


 ユイは困り顔も可愛いなー。

 でもちょっと罪悪感があるなぁ……。


 モモとヒフミがひそひそ話してる。


 敵を騙すには味方から。

 俺が下心から暴走していたことは、隠してた。


 人型ロボットの彼女がやっと生まれた時に、こうしてスムーズにサポートしてもらえるようにって。練習。予防。



 ──モモとヒフミが振り返って、その黒目に銀光を映した。



「「……今日のエナジージュースはヒカルのおごりで」」


 もちろん。


「とっておきの、エネルギー増し増しのやつを手作りしよう! まかせといて!」

「うわ悪質……」

「10日分のエネルギーまとめて与えとこうとか思ってそう……」

「俺への印象がひどいなぁ」

「「効率重視、倫理超越」」


 まあそうなんだけどさ。


 ユイが、自分の手を日にかざしてる。

 ブレスレットは、透明素材に電子線が数本きらめいているシンプルなもの。いざという時にきちんと発動するように最適化したんだ。


 万が一にも悪人に手首を掴まれたりした時には、圧力がきつくかかることで自動発動もする。


 ロボットに作用する力は、きっとユイの武器になるからね。



<ヒカル>

「……ん?」

<ありがとう。これ 綺麗>

「どういたしまして」


 ありがとう!? ありがとうだって!!!! うわー!

 脳がカッと熱くなった。


「綺麗なものを身につけると幸福を感じるだろ? あと……可愛らしい造形のものとか、ユイは好きなはず。そのシューズの紐、ハジメが頑丈なやつに変えちゃったけど、ダメだったよな。リボンに変えてあげるから、ちょっと足貸してくれる?」


 早口でまくしたてて、しゃがみこむと、ユイに頭を蹴られた。


 シューズを脱いでいたからダメージはないけど、ひしっとシューズを後生大事に胸に抱えて、体をそらして俺から隠す。



<いや!! 触らないで>


 触らないで…………?


「……ヒカルくーん。君ってやつは。その絶妙に自分勝手な行動はほんと良くないよねぇ」

「ハジメに紐交換してもらったシューズ、ユイさんは気に入っていたから。理想を押し付けると嫌がられるぞ」



 ーーーーーーー

 ーーーーーーーー




「「あ、逃げた」」

「……えっ……?」


 なにが?


 ぼうっとする頭で、周りの状況を確認する。

 頭がくらくらする、えっと、交代してからどうなった? 時間経過はどれくらいだ……? まだ太陽が昇ってる。


「昼だ……?」

<おはようハジメ!>

「いや朝だ???? あれ、じゃあ、俺……なんで俺に戻ってんの? 交代早くない?」


 ヒフミが説明してくれる。


「ヒカルがユイさんに無神経な発言をしてしまって、嫌がられて、ショックを受けてひっこんだんだ」


 ……なんだと?


 ……すごい決心で、一日変わってあげようって言ったんだけど? ユイにせっかく会えたってのに、逃げた? もう一人の俺、バカなの????

 勉強と発明ができるバカなの? 

 うわ、すごいしっくりきたな。


 ユイが<みてみて>と見せてくれるブレスレットがよく似合っていて、笑顔が可愛いのが救いだけど。


「とりあえず自衛手段はちゃんと作ったらしいからまだいいけどさぁ……」

「それはこういうものですぜ」

「こういう効果がありますぜ」

「……っだーー! はあ!? 最終兵器!? ユイを守る装備を作ろうって言ったのに俺はバカだな……!」


 武器じゃなくて、盾を作ってほしかったんだよ!


 まったく……ヒカルという人格は、思考があまりにも極端だと思う。攻撃こそ最大の防御、みたいなもんを作りやがって。


 穏やかさは持ち合わせていないのか!



<ハジメ 優しい 好き>

「そう……?」


 ユイの頷き、からの無邪気なお誘い。


<だから 一緒に 遊ぼ!>


 手を取られて誘われたら、断れるわけがない。

 ぽやんとしているうちに、走り始めたので、一緒に足を動かすことになる。



「ユイちゃん、自分が愛されているとよく知っている言動だね〜。ハジメくんの丁寧な愛情がきちんと伝わっているんだと思うよ?」


 モモがこそっと心理を教えてくれた。


「丁寧に」ここ大事だぞヒカル! いいな!?

 きっと俺のようにユイを大事に思っているであろうヒカルに、頭の中で叫んでおく。



 返事なんてないけどさ、しっかり聞いておいてくれよ。

 どれほどの想いを込めてユイを作ったんだろうか、ってその執念に驚かされるくらいなんだから。



 チャイムが鳴った、あと5分後に朝礼が始まる。

 教室に急ぐ!




 [レポート]


 美少女型ロボット ユイ 3/10


 ・知識 博士級

 ・知能 幼児


 ・装備 セーラー服・白衣・スニーカー・犬耳カチューシャ

 ・なつき度 MAX+一


 ※エネルギー残量:ほどほど





挿絵(By みてみん)


なかなか面倒なヒカルですね!

長年待ってただけあり、ユイの前で空回り。


読んでくださってありがとうございました!

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