悪夢の始まり3
目が覚めると白い天井が目に入った。眠くて体に上手く力が入らない。
近くに白い服を着た中年の女性が立っていた。すぐに看護師さんだと分かった。
「起きた?」と看護師さんが聞いた。
僕はしわがれた声ではいと答えた。喉に痰が詰まっているようで上手く話せない。
「ここはどこですか?」
「病院よ。新在病院。」
聞き覚えのある病院だ。どこにあるのかはよく分からないけど。
「今日は何日ですか?」
「12月25日。クリスマスよ。」
そうか、あれから1週間たったのか。
「つむぎは、妹は無事ですか?」
「まだ無理をしないで、ゆっくりしていて。」
そう言うと看護師さんは僕の病室から出て行った。
僕は少しだけ手を動かす。腕が軋む様に痛かった。
ああ、そうか僕は生きていたのか。そう思うと深く安堵した。
動く右手でテレビを付けた。僕の病室は個室のようなのでイヤホンをしなくてテレビを観ても大丈夫そうだ。
テレビのチャンネルを何となくニュースに合わせた。
すると、中継のカメラが燃えた僕の家を映していた。
『こちらが、現場となった少年の自宅です。事件から1週間経ちましたが、まだ当時の悲惨な様子が分かります。』
ニュースの見出しには、『不登校少年が妹と無理心中を図る』と書いてあった。
レポーターが近所の人にインタビューをしている。顔を隠して、声を変えてるが、向かいに住むおばさんだろうと思った。
『いや、いい子でしたよ。普通に挨拶してくれるし、妹ちゃんとも仲が良かったし、まさか家に火をつけるなんて……』
絶句した。世間では僕が家に火をつけたことになっているらしい。
しばらくそのニュースを観て、妹の無事を確かめたかったが、事件から1週間経っているせいか、あまり情報を得られなかった。
どうしたらいいんだろう。今から警察に行って、僕の言うことを誰かが信じてくれるんだろうか。既に1週間経っている。証拠は捨てられている可能性が高い。
僕が途方に暮れていると、病室のドアをノックする音が聞こえた。