ー第6話ー
機種の修理をしなければならなくなったので、救済のために投稿します
SSの方を向く。皆塚小隊指導者はこの娘だろうか
『わ、私です!』
『貴官か、僕のことは知っているね?』
『は、はい』
以前首都警察の栄本少佐に言われたことがある……"将校の威厳がない"。
言い訳をさせてくれ。
史実のナチス親衛隊、いや、武装親衛隊か?。やつらは上官のことを階級呼びしていたらしい。
語弊があるが、何が言いたいかと言うと、敬称をつけなくて良かったということだ。
国防軍では"大尉殿"と、殿なり閣下なり必要だったがな。
だからこっちもあっちと同じようにしていいという道理は無いが、こじつけるならこんな感じである。
鉤十字の腕章を振りまき、周囲を睥睨する僕。彼女たちにはどう見えただろう。
____ただの迷惑なやつだろうな。
呼ばれたからって、半端な理性で暴力を見せびらかしていいわけではない。
『なぜ貴官が僕を呼んだ?。ああ、深呼吸してからで構わない』
鋭剣をマントに片付け、近くの椅子に座った。
連中に落ち着いてもらうためもあるが、もう少し悪者を演じていたかったのだ
『………話し合いを終え、瑞浪陸軍少将閣下から認可をいただきました。』
『まぁ中佐殿も、座ってくれ。話に間違いがあってはダメだからね。他の者は…そうだな、Ich weißと言うものは下士官兵も問わん、残って説明してくれ』
脚を組んで、猫の手を取り出しては確認する。何か通知は無いかと
残った者は下士官4名、下級将校14名、高級将校3名、兵1人であった。
『貴官らに任務があるのなら、そうだな、ライン登録しよう。登録したなら今日中に所属氏名と階級を述べたまえ、そして、忘れそうなら証言をまとめておくように。』
さぁ、救いの手だ、取れ取れ。
『……じ、自分は』
これにて下士官、下級将校はそれぞれ1名となり、高級将校3名、兵1人まで退室した。
金川や柴田はいない。
『それからこの部屋より悲鳴がして、久保一等兵が暴行を受けていたのを確認して』
『誰にやられていた』
『内藤少佐です』
『間違いないな、一等兵?』
久保を一瞥する。彼は言ってもいないのに姿勢を正して、こくりと頷いた。
いやそれは話さんのかい。
続いて、皆塚に続きを促す。
『それを止めようとして?』
『一等兵は弾き飛ばされ、そして内藤少佐は私たちの人格を否定してきました。』
『え、例えば?』
皆塚は気をつけの姿勢のまま拳を握り…だんだんと、声も震えてきている。意味わからん意味わからん。いきなり人格否定だと?
『国民が虐められていても助けないとか、身体つきだけはいい売春婦だとか』
『ほう、国民が虐められて?、どういう意味だ、共産主義者どもなら殺されても仕方がないが』
『はい…………!。…その上戸川一等兵曹は太腿を触られました』
は?。え?。
『誰にだ』
『屑山少尉という、内藤少佐の子飼いです』
『……そうか。で、氷室大尉は?』
後で聞き出して、射殺しよう。
本当に舞が実家に帰ってくれていて良かった。
もしいれば、僕は西領軍司令部を人員不足に陥れるだろう。
『………』
『……衛生室であります…!』
皆塚が叫ぶように言った。
衛生室?。え?、い?
おい、どういうことだ。Second Rapeの次は事故?。故意?。
『2人の国防軍下士官に窓から突き落とされました…!』
『…その下士官の名前は?』
『八漆曹長と、南原兵曹長であります!』
『……国防軍の諸君、異論は無いな』
あまりにも不審な国防軍の態度に、僕も動揺を隠せない。
嘘だろ?、全て____真実?
突撃隊白狗部隊の下士官が痴漢される?。将校が突き落とされる?。
国防軍突撃兵部隊の下士官が痴漢する?。将校を突き落とす?。
振り向くと、彼らは僕を前にしてひどく怯えていた、1人、口を開く。
『……ち、中佐、私は今日この司令部に配属されたばかりで、こんな実情だとは知らなかっ、はひッ!』
発砲。P98の銃口から閃光が漏れた。
射殺してはいない。
川崎とかいう怪軍将校は責任転嫁にご執心らしい。
気分的に彼の鼓膜を吹き飛ばした。
『僕は"親衛隊員が"国防軍に迷惑をかけたと聞いたのだが。高級将校の貴官に伝わっていないとは』
『ゆ"、許し"てく"れ!、、』
銃を向け、怒りを十分に込めながら話す。
本気で怒っている。
嫌いな奴には理性を保って、どうでもいい奴には本能を振りかざす。
何たる不思議か!
『なぁ、悲しいなぁ。僕は貴官ら西領軍司令部を信じていたのだぞ?。同期の屑どもを除けば、皆優秀なのは真実のはずだ』
『ち、中佐殿!。』
『銃殺隊が必要かね?。少尉。貴官がそれでいいのなら____』
『もう充分です!。中佐殿!』
僕を階級敬称呼びした女性下士官が、僕の手を掴んだ。
『何をする。二等軍曹。』
理性はプラナリアではないのか、再生を待たなければならない。
ちくしょうめ、まぁそうだな、さっきから加害者ばかりで全然被害者のケアをしていない。
痴漢は別名、Second Rape……二度の強姦と呼ばれる重犯罪だ。
加害者はその感触を握りしめ、被害者ら彼の感触を噛みしめる。
一生忘れることはない。
だがその不条理なことに……痴漢冤罪、という面倒なものまで誕生してしまった。
触られた、身体の部位について言われた、見られた。
元々現世から事を発した問題とは言え、あの世でもこの問題は絶えない。
北領のあるところでは、親衛隊員が国防軍人に対して"揉ませろ"と言った事件が起こったり、逆に国防軍人に親衛隊員が強姦されるといったようなことが起こっている。
僕も正直怖かった。
陸軍士官学校時代、僕は演習の時以外は酷く目が悪かった。
たまに意図せず女学生の身体に触れてしまうことがあったのである。
幸い何もなかったが、その当時の癖で、今でも僕はポッケの中に両手を突っ込んで歩いているぐらいだ。
それでも、彼女は許そうと言うのか。
『もう充分なのであります!。どうして彼だけがこのような目にあう必要がありましょうか!』
『全員殺すよ。特にあの少佐はな』
『し、白木隊長殿に知られればどうなるでしょう!、それに駒代上級大佐殿も!』
『銃殺刑でも禁固刑でも受けるさ、将校の義務を負ってもいい』
やけに、僕の右手を持つ力が強くなってくる。
下士官の方が身長は高いから、その表情はよく見える
泣きそうになっていた。
『……どうして、どうしてそんなに、憎しみを』
『殺しと性を知ってしまったからだろうな。この歳でさ』
『…これ以上、彼に、暴力を振るうおつもりなら、警察呼びますよ』
ふん、ふふん。さすが白狗部隊の下士官だ、よく鍛えられている。
氷室と牧野を部隊教育に回しておいて正解だった。
単純に突撃隊員になれるだけの気概はあるというだけでもあろうが、さぁ〜…て、これからどうしよう。
この後の展開考えてなかった。
『……わかった、じゃあ僕は衛生兵を呼んでくる。皆塚少尉、ついてきてくれたまえ。氷室大尉とも話したいしね。』
下士官の手を振り払い、拳銃をマントに収める。
鼓膜が未だ麻痺しているらしい川崎を無視して、身を翻す。
部屋を出た。
司令部だからか、あれほど後でも人通りは絶えなかった。さすがに親衛隊員の僕に目を合わせてくるものはいないが、不審なことに、衛生兵の姿がいまだ見えていなかった。
少しだけ歩いてから皆塚が口を開く。
『……申し訳ありません、中佐殿』
『…、なぜ貴官が謝る?。本来この任務は特務部に課せられたものだ、こう言ってなんだが貴官らには、完全な良心で任務を行ってもらったに過ぎない。…こちらこそ、すまない。』
少しだけ僕より身長が高い彼女の顔が見える。
なんというか負の感情、本当にかわいそうである。
彼らの処遇は、国家保安本部によって閻魔庁から送られるだろう。
戦警に逮捕させる必要があるだろうが、そうそう手間もないはずだ。いやどうだったろう?
『…っ、大隊長殿が来てくれなければ、我々もどうなっていたか。西領軍は親衛隊に反感を持っているものも多いですし……』
『それは知らなかった。貴官が遠慮をしなくてよかったよ。残念ながら倶生神にコネは無いのだ』
『…………』
自分の部隊、子飼いの将校下士官の顔と名前くらいは覚えているが、実は白狗部隊に送った元黒猫隊員の中には、僕の知らないものも当然、いる。
妖怪GPSである倶生神ーまたは親衛隊保安部職員ーに知り合いなどいないから、ずっと気にかけておくこともできないのだ。
……将校として失格だろう。
『…確か、ここだったな。東州方面軍で働いていたから忘れてしまっていたが』
衛生室の前に立つ。
ドアをノックし、名前と肩書諸々を名乗ってから入った。
後ろから皆塚が続く
『……』
中はがらんとしていた。
絆創膏を取りに来ていたらしい空軍兵と少しの軍医以外、ほとんど帝国兵はいなかった。
氷室大尉は奥の区画にいるらしい。
驚いたことに、親衛隊員が1人いた。
……開襟だからSDか?
『帝国万歳。すまないが、衛生兵を2人、第3会議室に寄越してやってくれ、将校が1人昏睡してな、ああ、もう1人は鼓膜をやられたらしくてな』
親衛隊式敬礼を彼らに行った後、氷室大尉の元へ向かう。
衛生兵たちはひどく驚いていたが、無視した。扉が開け閉めされる音が聞こえた
『…おや、こんにちは。特務部か』
西領訛りのある口調で、SD隊員が話しかけてきた。
今度は僕が驚いてしまった
馴れ馴れしいというか、気さくというか。
氷室大尉はベッドに寝かされている。各所に包帯が巻かれており、ぐっすりと眠っていた。
『帝国万歳。…俺は火村重実SD中佐。どうぞよろしく』
『帝国万歳。青瀬幸輝SG上級准尉です、どうぞよろしく』
『ああ。うん?、君は戦闘中佐だろう?』
『ええ、そうです』
SDの将校とは話した記憶が無い。特に理由も無いが下に出ることにした。
身長は175cm以上はあるだろうか、軍帽で隠れて見えないが、おそらく髪型は坊主。白い丸メガネに、SD2の袖章。
……保安警察だ。
『なら同じ階級じゃないか、タメ口で構わないよ、中佐』
『了解です。中佐。……突撃隊の将校がお世話になったらしい』
素直にお礼を言った。面白く人の良さそうな_____この火村というSD中佐の第一印象はそんな感じだ。タメ口で良い、ということは今後の関係を考えているーというのは僕に置いて適切であるだけだけどもーと考えられるので、その点は真面目だとも考えられるだろう。
親衛隊保安部の連中と特務部の関係は濃密であると言っていい。
なんたって我が親衛隊特務部隊は夜戦憲兵の任をも帯びている。
保安警察から情報を得て亡者を逮捕し、裁判庁へと護送する夜戦憲兵隊。
そういえば保安部に日頃からの御礼として品を持っていく時に、談笑する火村を見た気がする。
そんな保安部将校が、どうして?
『…ああ、非番だったから国防軍の友人に会いに来たんだ。そしたら茂みから呻き声がしてね、彼女がいたから近くの兵をとっ捕まえて』
『傷の程度は。高級大隊指導者。』
『…落ち着いて聞いてくれよ?。右肩打撲に両足骨折、頭から出血もあったな。衛生兵が言ってたが、呼吸器に異常が出てるらしい。』
『………………!』
顔が真っ赤になる。体温が30度に急上昇したような____
落ち着くなど不可能だった。先ほどの白狗下士官の必死そうな顔がまず頭に浮かんだが、無視したい衝動に駆られている。
おかしいよ。絶対。
そんな傷事前に暴行でも受けん限り……!、その上、頭から出血!?。
意味がわからないッ、!
『落ち着くんだ、中佐、氷室大尉は治療を受けて命は助かったんだ。』
『今すぐ戦闘警察を呼ぶ!。火村中佐、人務局へ行くぞ!』
『いやなんで?』
『西領軍司令部を起訴する。命令不服従及び友軍への暴行、銃殺刑だ!』
日本語の正確さなどもはやどうでも良かった。
もちろん人務局へ被害届を出しただけでは終わらない。戦闘警察の取り調べから、親衛隊隊員公安委員会の設置、そして十王の内誰かの裁可を得る必要がある。
この、灰色開襟に黒のシャツを着たSDも、それを理由として僕に言うことだろう。………、
………少し頭を冷やさなければなるまい。
『落ち着け!。……氷室大尉は生きている。祖国の医療に信頼は無いのか?』
『……、……。わかった、衛生兵に厳命しよう。射撃演習に付き合ってくれんか?』
少し考え、彼を一瞥したあと、氷室を見つめて言った。
所謂"バッティング・センター"。
安価で銃を撃てる施設で、軍人も結構いる。申請すれば近接戦闘の練習もできるから、この手の施設は今や日本全国に顕在している。
軍人手帳あったら無償だしぃ。
『オーケー。…そうだな、あー、』
火村は先程から黙りっぱなしであった皆塚を見た。氷室を1人にさせるわけにも行かず、SDの部下を呼ぼうにも、女性の帝国兵は全員出払っていることを思い出したからだった。
名前がわからず、困惑している。
『皆塚、皆塚少尉だ』
『ありがとう。皆塚少尉、氷室大尉に付いといてくれるか』
『……は、はい!』
そもそも皆塚は白狗部隊員。他部隊ーというよりか、他組織のSDーに頼るなら、少尉1人を縛り付けておいた方が安上がりだった。
それに、彼女が気の利いた将校なら、不運な下士官や不幸な兵を捕まえて代わりの番をさせることだろうし。
『はぁ、ちくしょうめ。舞は今頃何をしているんだろう』
『舞?』
『うん?。舞?』
『ああ。』
心の中で言ったつもりなのに、口に出していた。
今の僕に、できることは無かった
『僕の妻だよ。手袋でわかりにくいだろうがな』
左手の薬指を示した、
根元付近に小さな膨らみがある。
それから、右手でドアを開けた。
廊下に出る。行き交う国防軍人たち。
『きっと美人なんだろうね』
『ああ、その上性格も良いぞ。』
彼の言葉を肯定した。
最後に見た彼女は、涙と鼻水で汚れた決して美しいとは言えない顔をしていたが、どんな姿であれ、僕にとって美しかった。
もし彼女が上半身だけで、衛生室で再生を待っていたとしても僕は迷いなく抱きしめるだろう。
だって、彼女が好きなのだから
今歩いているこの国防軍司令部でも、僕はそう叫べた。
『今も俺は独身なんだ、羨ましい。』
『貴官が?。意外だ、本当に意外だな。出身は?』
歩きながらそう話した。近くの国防軍人たちは僕たちに敬礼するが、いちいち答礼するのは僕で、彼は時々親衛隊式敬礼を返すだけだった。
そこをどう評価すべきか、彼の出身を考えながら困惑してしまう。
『西領総合士官学校だよ。まだ国防軍が国防軍じゃなくて怪兵隊だった時だな』
『本当かね!。ああ、なれば貴官は僕の先輩か』
『先任などと呼ぶなよ?。今更』
『Jawohl。』
話しているうちに、外に出た。
SDの中尉が車の前で待っている。
『お帰りなさいであります!。中佐』
車のドアを開けながら、彼は言った。
鋭剣を身につけ、腹部左にホルスターを着けている。
……根っからの将校か、僕はそう思った。
SDの正式採用拳銃は確かP10か。
それに文句など無いが。
僕が目を合わせようとする前に、彼は
『ああ。…西母副官、こちら青瀬中佐だ、丁重にな』
『はっ!。青瀬中佐殿、西母勝国であります!』
『ああ、よろしく西母君』
『はっ!』
答礼を行なった。すでに、僕の心は己が体温の如く冷えていた。
SDの印象は、ずっと暗いものであった。
だがそれは根も葉もない噂と言えるだろう、考えてみるならば突撃隊だって、ほとんどの将校、下士は親衛隊保安部治安維持介入部隊から引き抜かれた人物だ。
保安部が本当に冷たいヤツらばかりならば、僕の人生経験に突撃隊大隊指導者、というものなど刻まれることは無かっただろうし。
車に乗り込む。SD用車に乗るのは…初めてだ。