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ー第2話ー


『……〈し、してないけど。どうしたの?〉』


『…〈ともかく今は陸上憲兵隊司令部にいてほしい!。君に大きく関係のあることかもしれないんだ〉』


まだ、判断材料が少なすぎる。

唯一の…と言われれば、一度彼女(との)守らんと誓いを立てる(結婚を認めてもらう)ために実家へと出向いた時に、確かに聞いたのだ。


彼女の母親が『菜穂子さんは来てないよ』と言ったのを。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


白木(しらき) (まい)


陸上憲兵隊の将校であり、階級は上級大尉。

炎を操る能力を持つ、本作では脇役。

青瀬の妻であり、また幼馴染。

大いなる母性と思いやりを持ち、その点に苦悩もしている。

一人称は(ウチ)


従姉にあたる人物の凶行には悲しみを覚え、事件の捜査には参加できなかった



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


親衛隊特務部隊(オーヴァ・フェルト・イェーガー)


過去に計画が頓挫した混成部隊。

規模は師団(9000名)であり、強襲砲兵や工作兵を抱えているが、大規模紛争には2度しか参加したことがない

青瀬たち突撃隊を傘下に置き、日夜親衛隊として警察業務に当たっている。


だが、本作は突撃隊メインである


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



『…〈わかった。早く帰ってきてね〉』


『…〈Zu(はい) Befehl(了解) . Ende(以上)〉』


『…〈……〉』


スマホを左胸のポケットに仕舞い、車窓を開けるスイッチのあるところへ、肘を乗せる。

きっと、椎崎中佐が憲兵隊全部隊に通達しているはすだ。


"自殺志願者の面倒を見る"と


勲章目当てか?、と言われると否定はできない。

だれもかれも、他人の決断の首を突っ込むことはしない。

かの紅葉閣下もそうだろう。


『…なぁ分隊指導者(二等軍曹)。君は何がらみだと思う?』


『彼女の職業でありますか』


運転手に尋ねてみた。

うん、とうなずく


『そうですな。香水の匂いがしませんでしたから普通の会社員ではありませんでしょう。少なくとも、嗅覚が敏感な子供か老人を相手にしていそうだ、医者……なら服毒自殺だとかするはず』


表情を曇らせながら彼は答えた。


『医者は偏見だと思うが。…そうかね、意見ありがとう。……パワハラかなぁ?。僕は苦手だよ』


否定を交えながら言い放つ。僕は空を見上げ、さながら戦死した友人を想うような暗い表情で言葉を続けようとした


『…理由をお尋ねしても?』


『加害者を徹底的にブチのめしたくなる。全ての権力と腕力を使ってね』


『…中佐殿の経歴は存じ上げておりますが、国防軍時代に何か遭われたのですか?』


首を振った。国防軍時代は特に何もない___という意味と、自分のー親衛隊高級戦闘中佐(クリークス・シュタンダーテン・フューラー)というー階級はあくまで相当官階級(ハリボテにすぎないの)だという意味を込めて


『まさか。我々が天皇陛下と十王に唯一制裁(殺害)を許された兵隊(ゾルダーグン)だからだよ。国民がではない』


『ならばそれは権利ゆえにですか?』


"国民にそれが許されていたなら?"


『すまない。4割は正義感だ』


分隊指導者(二等軍曹)はにやりと笑った。


『なら中佐殿への忠誠は9割誠意でありますね』


『ふん、残りの1割は?』


鼻で笑ってやった


『本能であります』


至極真面目に答えやがったな。……


『…後、何分だね』


『もう着きます』


"陸上憲兵隊師団司令部"と書かれた表札と、小銃を持った怪兵隊1個分隊が見える。

防御部隊指導者の下士官の姿は見えない。

もしかして、その下士官も準備に____まさか。他人1人収容するのに時間がかかるわけがない。

車の窓を開ける。


お帰りであります(ハイル)!。現在防隊指導者の鹿島一等軍曹殿はお手洗いでして。車内を確認させていただきたいのですが』


若い伍長だった。…ただのトイレかい!


『ああ、だが重容者がいるから、刺激しないでくれたまえ』


『重容者でありますか』


重容者とは、元々、凶悪犯罪者や面倒な捕虜を指す軍隊用語(ミリタリー・スラング)だ。


どこかの誰かが『重要な保護が必要である収容者』と勘違いし、このような(自殺願望を持った)状態の人物も指すことになったらしい。


『…異常ありません。失礼しました!』


伍長は僕の階級章と車内を凝視するなり、声を震わせて言った。

そら中佐ですからねぃ…

でも悪い気しかしないぞコレ


どうも(ダンケ)。分隊指導者』


了解です(ヤヴォール)。』




降車し、二等軍曹と敬礼をして……

桜井に広瀬さんを押し付けた(・・・・・)

電話をかける

『…〈もしもし、海羅副官!。貴官は現在(いま)どこにいる〉』


『〈青瀬隊長ですか?。ああ、現在私は白熊部隊の寮におりまして、友人と汗を流していたところです〉』


『〈すぐに来てくれ!。本当に汗を流していたのならシャワーを浴びてからでも構わん。ああ、黒猫の第2中隊第1小隊を召集する。〉』


敷地内を歩きながら、比較的大きな声で話す。途中で白狗部隊の一部から敬礼を受けたが、軽く流した。


『〈装備は?〉』


『〈ああすまん。拳銃と銃剣だけ。後、私服を着てくるように伝えろ〉』


『〈特高警察へ連絡は〉』


『〈まだそれはわからん。現時点では必要ない。〉』


『〈はっ。〉』


『〈……以上だ(エンデ)〉』


『〈はっ。〉』


……電話を切った。

とにかく司令室に行かねばなるまい。

舞も不安がらせてしまっているから、まぁ、ともかく早く行こう。

司令室は別棟だ。




『青瀬准尉。君にしてはずいぶん時間がかかったな』


『はっ、中佐殿。秩警(クリポ)との連携でしたから、どうしても』


椎崎蓮乃SS中佐…もとい、師団司令部付一等参謀は鋭い目つきで僕を一瞥した。

解体剣(ソウトゥース・ナイフ)を左腰に下げ、親衛隊特務部隊を示す赤い腕章をしている。

敬礼をした。


『…君は白木上級大尉を最優先にすると思っていた。早く行ってあげたまえ』


『遅かれ早かれ現実は変わりありません』


(ゾルダット)は拙速を尊ぶというが?』


『彼女は将校(オフィツァー)でございましょう』


……第1棟ーというか、この場合司令部がある棟ーの廊下は静まり返っている。

椎崎中佐は、ふっ、と笑った。


行け(ロス)


了解(ヤヴォール)


『青瀬准尉殿!。どこにいらしていたのです。白木隊長がお待ちですよ!』


後ろを振り返る。声の主は…白狗部隊の大隊長副官、氷室大尉だった。

『司令室か?。すぐに向かう』


すぐさま将校の顔へと切り替え、軍帽を正す、、

珍しく息を切らしていた氷室といい……椎崎中佐といい。

もっと後に通達すべきでは、と思ってしまう。

起こってしまったことに怒ってもしょうがないのだが。



『失礼します。お待たせしてすいません、同志諸君』


部屋を開けてから親衛隊(SS)式敬礼を捧げる。

…相も変わらず、司令室に色味は無い。

お世辞にもならぬ下品な冗談(ジョーク)を言うならば、綺麗な女性陣がいるだけマシと言えるだろうが。


『どこに行っていたんだ?。探していたぞ』


『ね、ねぇ、どういうことなの!。早く教えて!』


新田少佐と舞に詰め寄られ、よろめいてしまうが何とか耐える

駒代大佐だけは冷静であった。

牧野少尉や東坂准尉の姿もある。


『2人とも落ち着いて。まず私に報告しなさい』


『はっ。桜井少尉と見前区のパトロール中、自殺願望を有すと見られる女性を高所にて発見、現場の大阪府警秩序警察第3中隊は民衆の動きを抑えんと尽力しておりました。』


後ろをチラ見すると、舞は熱い視線で僕を見つめていた。


『そこまでは椎崎に聞いた。間違いないね。名前は?』


『はっ、重容者の氏名は……"広瀬菜穂子"であります。間違いありません』


『うん。報告ご苦労様』


足音が響いてくる。冷や汗が流れ、香りから誰か簡単に把握することができた。

舞は、僕に顔を目一杯近づけ、言った。


『もう一度言って!』


『広瀬、菜穂子』


『広瀬…、菜穂子!』


反芻するように、彼女は名前を叫ぶ。

彼女は僕から体を離すと、まるで空気が抜けたかのように近くの椅子に座り込んでしまった


『青瀬、取り調べはできるな?』


『はっ。連隊指導官(上級大佐)殿』


踵を合わせ、敬礼する。

答礼の確認もせずに僕は後ろを振り向き、膝を曲げ、彼女に手を差し出す


『大丈夫かい』


『………幸ちゃん…っ!』


顔をばっ、と上げた彼女はその涙で濡れた顔を僕の胸に埋め、背に手を回してくる。

そうだよな。身内が自殺しようとしてたんだから、そりゃ苦しいよな。


くそったれ、ぶち殺すぞ。


この怒りを不自然とは思わなかった。

軍の規定から、改姓には手続きが必要ということで事実上は青瀬家の次男と、白木家の長女という関係であったが……


幼い頃から知り合っていた我々(両家)を敵に回して、無事に眠れ(死ね)ると思うなよ。


真っ黒な憤怒が体を駆け巡る


左手は、既に短機関銃(MP11)握り(グリップ)へと周っていた。


『舞』


『……?』


彼女の目を真っ直ぐに見た。


『今回は、僕に任せて。僕が君達を守る、御家を守ってみせる』


彼女は何か言おうとしているが、口をパクパクと動かし、目はウルウルと蠢いている

ただ、コクコクと頷いた。


『……水瀬少尉!』


『はっ!』


水瀬少尉に舞を預ける(・・・)

軍帽を一度脱ぐ。

真っ白な猫耳が僕の頭部から露出し、ビクビクビクビクと、それはまるで痙攣のように


『……』


背後へ車内時の敬礼をし、司令室を出た。

廊下には談笑する下士官や、遣われ(パシリ)兵ども、

それすら視界に入れない、と、僕は大声で叫ぶ。


『〈第901独立強襲猟兵大隊に伝達!。第2中隊第1小隊(アインス・ウント・ツヴァンツィヒ・ナハト)は大隊本部へ集合せよォっ!〉』



・紅葉閣下


皇陽帝国国防陸軍第3方面軍司令官の、紅葉景胤上級大将のことです。青瀬とは友達の友達程度の関係でしかありませんが、イメージが無愛想な人なので、作中では"ヒトのことなんてどうでもいいと思ってそう"と言われました。

本人はかなりの愛妻家です。

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