ープロローグー
これをまず読んで頂ければありがたいなぁ、と。
少年は憂鬱であった。
全てを失った気がしていた、友人も、愛する人も、家族からの愛も、そして知性知能も全てを失った気がしていた。
だから彼は、現世を諦めることをした。
縄が首を絞める感覚、段々と、まるで地面の下へと引きずりこまれているような
だが少年は気づいた。
『否、ようなではなく、引きずりこまれているのだ』と____
確かに自分は、両足を死神…らしき若々しい男に拘束され、じわじわと堕とされていっているのであった。
それも、"鬼"に。
落ちた先では、ひどく怖い顔をした10名の老若男女が大きな椅子に座り、僕を睨みつけていた。
まるで裁判所だ。色味がない
いきなり、『お前の死因はくだらなさすぎる。』
そう、誰かが言った。
頭に"秦広王"と書かれた冠を被った男だった。
くだらない…?
少しカチン、ときたが、どうにも、この人たちに逆らうことはできないと思った。正直恐怖を覚えている
『閻魔王閣下!。失礼します!』
軍服を着た男が、どこからか出てきた。
旧日本軍の近衛兵のような見た目。
『また、ア共か?』
『はっ!。やつら、楼香橋付近で演習を行っております!』
『………』
何やら話し合っている。
ア、というのはおそらくアジア。
共、というのは恐らく共産主義。
……共産主義だと?
『おい、大丈夫か?。震えているぞ』
30代ほどの綺麗な女性…五官王は僕に尋ねた。
全く気がつかなかったが、どうやらこの距離で見てもわかるくらい僕は震えていたようだ。
『五官王。彼は我々の正体を理解したのではないか。ならば震えるのは当然であろう。』
"五道転輪王"は顎で僕をくいっくいっ、と指し、そう言い放つ。
"閻魔王"と"宋帝王"は軍服の男と忙しなく話している。
彼の階級は…少将らしい。
少なくとも、将軍だ。
『いやすまんね。今、我が国は他国と思想の入れ違いで面倒なことになっていてね』
『五官王!。亡者にそのようなことを言うのはいかがなものか。』
初江王……苦労人ポジかな?
身体の震えは止まらないのに、妙な余裕が生まれている。
共産主義、ねぇ。
もう死んだのはわかった。
僕が生きていた時代は、共産主義は息を潜め、多くは資本主義国となっていた。
僕の祖国、日本もまた然り。
共産主義や全体主義が何をしてきたかぐらい知っていた。
『…あの、五官王閣下』
『何かね』
そうだ。確か昔、大学に入るなら思想関係にしようかと言って、父に怒られたっけ。
『僕を、獄卒にしてください。』
危険だ……と。