表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/45

第45話

「ご苦労だったな、ヘンリー。君が指揮をとってくれたおかげで予定よりも早い。戦火に巻き込まれる前にヴェルトを出る。兵をまとめておけ」


「はい、マルク公爵」


ヴェルト中の預かり所の獣人を解き放ち、少し前まで平和であったヴェルトを血みどろの戦地へと変貌させた張本人であるマルク公爵邸の執事長ヘンリーはマルク公爵に仕事の完了を報告していた。

マルク公爵はヘンリーの報告に満足しながら、隣の部屋への扉を開け、中にいた鎖に繋がれた獣人の少女へといやらしい笑みを向ける。


「さぁ、行くぞ…ヴェルトも悪くなかったが、ワシにはいかさか小さすぎだ。帝都こそワシにふさわしい。まぁ、新天地へ行っても貴様の生活は何も変わらないだろうが」


そう言われた少女は表情をいっさいに変えずに、ただマルク公爵を見返すだけだった。

そんなマルク公爵を見ながらヘンリーは内心で軽蔑心を向ける。


(反応ないのに何が楽しいのやら。ヴェルトでは給料の高い部類だったから、この仕事に就いたけど仕事内容がアレだったな。辛くはないけど不快だ。帝都に着いたら新しい仕事をさっさと探すか…帝都ならなんかあるだろ)


帝都への亡命後のことを考えるヘンリーと反応のない獣人の少女と相対してニタニタするマルク公爵。

そんな2人のいる部屋の扉を勢い良く開き、マルク公爵が雇っている私兵の1人が慌てた様子で部屋内に駆け込んでくる。


「た、大変です!」


「どうしたノックもなしに。マルク公爵、部下が失礼を」


ヘンリーは獣人の少女を監禁している部屋から騒ぎを聞き付けて顔を出しているマルク公爵に下げたくもない頭を下げて謝罪を述べる。

一方のマルク公爵は気にするなとひと声かけてから駆け込んできた私兵に報告の先を促す。


駆け込んできた私兵はかなり困惑をしており、その様子にヘンリーは良からぬ予感がしていた。

駆け込んできた私兵は他の兵と比べても経験が厚く、修羅場も多くくぐり抜けている。

よっぽどのことでない限り、気が動転することはないのだが、今の様子は尋常ではない。


「せ、聖女が…聖女がこちらへ真っ直ぐ向かってきてます!」


「聖女…ヘンリー、確認だが街の方は手はず通りなんだよな?」


「はい。間違いなく獣人による反乱が起きております。あの聖女が獣人の反乱を放っておくわけはありません…見間違いではないかと?」


「いえ、見間違いではありません!確かに聖女がこの屋敷に通じる道を真っ直ぐに向かってきてます!」


ヘンリーは部下のことを信頼していくが、この報告には納得がいかなかった。

もしこの報告が真実ならばヘンリーがしたことは全て無駄であったことを意味するため、納得がいかないというよりは信じたくないが近いかもしれないが、どちらにせよ聖女が接近していることはヘンリーは自身の目で確かめるしかない。


ヘンリーは望遠鏡を手に取るとベランダに出ると、屋敷に繋がる道を望遠鏡で様子を見た。


「どうだ?」


マルク公爵が問いかけるが、ヘンリーはしばらく呆然としたようにだまっていたかと思うと、ポツリと小さく呟くように報告した。


「………います。あれは確かに聖女です」


「…聖騎士隊は?」


「いえ…聖女と側近の2人。合わせて3人のみです」


「そうか…人類最強と名高い聖女とはいえ、たったの3人だ。何があったか知らないが、この近辺の住民は遠に逃げ出した。仮に聖女が死んでも…それは獣人のせいだ。………ヘンリー、指揮を取れ。勝てなくても時間は稼げ」


「………承知しました」


ヘンリーは頭を下げるが、その顔は悔しそうにギリギリと奥歯を噛み締めた。


(………聖女に勝てるわけがない。最後の最後になぜこんな目に…バチが当たったか?このデブに手を貸したから)


ヘンリーは込み上がる思いを拳を強く握ることにより発散し、平静を装って顔を上げ、部下の私兵に指示を出す。















































「………前方100m先の十字路。左右に待ち伏せがいます。右に2人、左に3人です。獣人ではなく人間ですが、傭兵のようなのて恐らくマルク公爵の私兵かと」


アーメリはいつものオチャラケた様子ではなく真剣な声音と表情で聖女に報告をし、聖女は「わかった」とだけ返事をすると剣を抜き、数度ほど素振りをするかのように目の前の虚空に剣を振るった。

すると、前方の十字路の左右から血が吹き出し、傭兵と思わしき死体が十字路に倒れ落ちてくる。


「お見事です、聖女様。ここからマルク公爵邸までの道すがら、複数の待ち伏せと思わしき反応があります」


「自惚れるつもりはないが…私に剣を向けることが何を意味するかわからないほど帝国貴族に教養がないわけがない。何かやましいことがあるのだろう」


「どうします。すでにマルク公爵本人と思わしき反応も私の魔法範囲に入っておりますが」


「逃げ出しそうになった時のみ報告してくれ。誰に喧嘩を売ったのか、思い知らせてから葬る」


「かしこまりました」


「行くぞ、アーメリ、エーメリ。信仰心はなく、欲は深い、愚か者には神罰を下さなくては」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ