第6話
ここは------。
知らない場所……?
……いや、知っている。
体が覚えている。
この先には家があった。
周りにはたくさんの動物がいて、楽しかった。
その動物と遊んでいた。
いつも…。
一緒に誰かがいた。
誰といたのかは思い出せない。
その家に一緒に住んでいたはずだ。
その人たちと一緒にいることがどこまでも楽しさを覚えさせた。
俺の楽しさの根本はここにあるのかもしれない。
だが、何かこの楽しさは別の感情と似ている感じがするのはなぜだろう?
それは何の感情だろう?
わからないことの多すぎる世界。
途端に情景が変わり、真っ暗な世界に一人取り残された。自分の姿さえも確認できない真っ暗な世界。
体がガクガクと震え始めた。止まらない。
どんなに拳を握り締めて止めようと思っても止まることのない手に恐怖を感じているのだと自覚した。自覚して体全体が震え始めた。
い…………だ。
嫌……。
嫌だ。
いやだ。
イヤダ!!
誰か……--。
誰か!!
助けて――!!
目を開けてもそこにあったのは白い天井だった。
汗のせいだろう、服が湿って体に張り付いている。
……夢だとわかった上で助けを求めた……。現実では助けを求めても誰も助けられないから……。
あれは知っているようで知らない世界。知っているのかもしれない、でも、俺の今の記憶にはない世界。知ることのできない世界。
どうすれば俺は取り戻せる?夢の中ではある感情でも、現実には感じられない感情。
俺はどうすれば取り戻せる? どうやったら取り戻して麗の願いを叶えられる?
取り戻したいと願っているのに…、取り戻せないもどかしさ。どこまでも自分を取り戻そうと思っても自分の下に落ちてくることのないもの。
以前まではあったものが今現在ない。あるはずのものがなくなった。
欠けたピース……。
あの人を亡くしてから……。
今現在でもいれば、俺をサポートしてくれていただろう。
あの人は俺の最高のサポート役だった。
そして、俺を愛してくれた人。
俺にとってあなたは本当に大事な人だったんだ。俺の人生を守ってくれた人だから……。
ねぇ、父さん。




