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第11話



 ・・・・・・抗えない。

 どうしても・・・・・・。

 これはすべて自分のせい。

 俺が・・・・・・やってしまったこと・・・・・・起こしてしまったこと。

 俺は・・・・・・。

 一生縛られるのか。この罪から・・・・・・。

 使いたくない。

 ・・・・・・いらない。

 逆らえば逆らうほど・・・・・・使ってしまう・・・・・・、まるで暴走しているかのように・・・・・・。

 「助けて」

 その切実な声は全て言葉にはならない。

 誰もが助ける前に逃げてしまったから・・・・・・。

 そばにいたのは父だけだった。

 後悔した。だが感謝の方が大きかった。だから逆らわない。抗わない。

 俺は・・・・・・父の大切な人を奪ったから・・・・・・。

 だから、抗えないのは自分のせい・・・・・・。



 どれ程、その罪に苛まれていたか。

 どれ程、その沼に埋まっていたか。

 ……今ではわからない。

 死ぬまで続いていくものだと思っていた。

 ……止まらない力で誰かを殺して……----殺されるまでー---。



 もう諦めた頃、……声を聞いた。

 望みを叶えると言った・・・・・・。

 意志をもっていいと言った・・・・・・。

 では、今の父への思いもいっていいのか・・・・・・。

 ・・・・・・罪を償うためにこの道を選んでしまったけれど、間違いだったと気づいてる今、止めてくれるならば何でも差し出そう。

 止めてください・・・・・・。名も知らぬ綺麗な人・・・・・・・・・・・・。

 切実な望みを・・・・・・叶えて下さい・・・・・・・・・。




 暗闇だった。

 どこまでも暗闇が続いていた。

 そこに光が差した。細い細い光だったけれど、最後の希望だった。

 これで、俺は解放されるだろうか……。

 いや、それは自分次第なのかもしれない。


 白い天井が見えた。

 体が重かった。どうやら、ひどく疲れているようだ。

 首をめぐらせれば、42V型ほどの大きさだろうテレビがあった。家にあるのと同じくらいだなぁと回転の遅い頭で考えていると、自分の存在する音しかなかった世界に別の音が聞こえてきた。

「起きた?」

 柔らかさを含みながらどこか子供のような元気のある声が足元のほうから聞こえ、そちらに目をやれば声から想像した通り子供っぽさの残る顔なのに、その体は大人だった。体ばかり成長して性格や声が遅れをとっている。顔は性格や声に付随するように同じように遅れをとっているように感じた。首をかしげ、髪が揺れている姿も、子供と大人の中間にいる彼女ではどうもバランスがとれず危ういように見えてしまう。

「……すまない。迷惑をかけたな」

 重い体で起き上がれば、どこかで聞いたことのあるような声が聞こえた。

「無理をしなくてかまわないよ」

 見上げた先にいたのは、まだ大人になりきれず子供っぽさがあるが、今現在も一歩一歩大人に近づこうと努力しているように感じられるのは間違いではないはずだ。見間違いでなければ、この人は先日海道家の本家である賀茂家の当主になったばかりの20歳に満たない賀茂雪斗であったはずだ。

「……なぜ?」

 ぼそりと聞こえるか聞こえないかの声を出せば、話をしようと体を気遣ってか手を差し出してくれた。


 部屋を出て一番に目に入ったのは10人ほどが座れる細長い大きなテーブルだった。見上げれば吹き抜けになっているようでいくつかドアが並んでいた。

 ふと視線を感じて目を向ければ一人の青年がドアノブに手をかけたままこちらを見ていた。薄い茶色といったらいいのか、なんともはじめて見る色の長い髪のサイドを残して軽く後ろにまとめている。こちらを見ている顔は幼さなどひとつたりとも残していない鼻も唇もすべてバランスが整っている。その瞳だけが人形にないもので、長い手足に細い体の立ち姿は人形という名の人の理想の形だ。本来ここにいていい存在なのかと思うほど人の目を惹きつけてやまない、そんな人がそこにはいた。

「鈴。すまないがどこかわかるか?」

 まだ重い体を支えてくれている雪斗さんは下に降りてくる青年に問いかけているから、あの青年の名前は鈴というのだろう。

「……麗の前だ」

 その唇から発せられたのはよく通る男とも女とも取れない中立的な声だった。

 案内された席はちょうど上座の隣の席だった。背もたれに体を預ければ、まるで自分のためにあるかのようにすわり心地がよかった。

 さてどこから話そうか。といいながら別の場所からいすを引きずってきて座ったのを見て、椅子などいくらでもあるのにと思ったが、先ほども座る場所を確認していたから椅子に何か意味があるのかもしれない。

「麗さんにはまだ話してなかったな。……秋良は知っているだろう。私の賀茂家の始まりを……」

 こくりと頷けば、ゆっくりと話し始めた。

「本来の伝承とはまたずれている可能性が大きいが、それでも私たち賀茂家が守ってきた伝承がある……」


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