PerfectDay
生意気にも実験的フィクションです。
…朝か?
カーテンの隙間からもれる太陽の光が眩しくて私は目を覚ました。
目は覚めているが私は現実から逃げたい、ただそれだけの気持ちのために布団から出られない。私は布団から出るのに、30分時間を費やし、ようやく体を起こした。激しい尿意があり、重い足取りでトイレに向かう。いつものことだ。
「おはよう」
ベランダに洗濯物をホシにくる母親とすれ違い様にあいさつをする。
「おはよう、今日は天気がいいよ」
「そうなんだ」
私は曖昧な返事をする。
私は階段を下り一階のリビングに向かった。私は一軒屋に住んでいる。私は4人家族の長男で、ここの所一番家族の中で起床が遅い。父と妹は朝一番に会社と学校それぞれ出かけた後だ。
リビングのテーブルには母が用意しておいてくれた朝食がおいてある。ご飯に味噌汁、それに目玉焼き。 母の優しさに感謝だ。
ラップがしてあるので、電子レンジでそれを温める。温めが終わるまで私は、テーブルに4つおかれた内の一つの椅子に腰掛けた。3つ残った椅子を見て、私はなんだか一人、ぽつんと取り残された気分になる。
………
チン!
モヤモヤとしたものが頭に浮かびかけたその時、朝食が温まる。温まった朝食を味噌汁、ご飯、目玉焼き、と言う順番に私はよく咀嚼してそれ食べた。味噌汁には私の好きなキノコ具が入っており私は心使いに感謝する。
私は食べ終えた食器を洗い、顔を洗い歯を磨き、寝癖を整えるとTシャツ、ジャージに着替え、薄いグレーのパーカーを羽織り玄関に向かった。下駄箱からあまりかかとの減ってない白いスニーカーを選ぶとそれを履いた。
その時に父がよく趣味のジョギングで履く愛用のブルーのシューズの踵に目がいった。よく減っている。
私は二階にいる母に聞こえるように
「行ってきます」
と言うと返答が来る前に、重い玄関の扉を開け、日の光が眩しい外に出た。無精髭を剃ってないことに気づいたが私は歩き出した。
日の光を浴びながら急ぐわけでもなく、私はゆっくりと歩いた。途中で何度か人とすれ違ったが、皆穏やかでゆっくりとしている気が私にはした。
10分ほど歩くと公園がある。私はその公園の日影のベンチに腰を下ろした。私は急ぐわけではないが、携帯電話を開き時間を確認する。
11時36分
土曜日
今日は土曜日か?そう思うと急に公園で遊ぶ子供の声が私の耳に入ってくる。走り回る子供たちとそれを見守る母親たちを私は静かに眺めた。
ふとメールが入っているので確認すると妹からだった。明日テレビで放送されるアイドルの番組の録画予約の依頼のメールだった。とりあえず了解と打ち、送信ボタンを押そうとするが私は手を止める。そして、人の笑顔の絵文字を了解の後ろに打ち込んでみる。これで送信!するべきかを迷っている間に気がつくと送信ボタンを私は押していた。
私はフウと息を吐き出すとボーと今度は空を眺めた。雲一つない青空だ。穏やかに時間が流れのを私は静かに感じた。
しばらくすると私の携帯電話が久しぶりに着信を告げる音を鳴らした。私は少しだけ体が緊張する。
………
私は何回目のコールで通話ボタンを押しただろうか?定かではないが受話器を耳にあてた。
この前あった相手の印象のままの事務的な声がした。一言一句逃すまいと私は集中する。
「はい、はい、はい」
姿は見えない相手だがベンチから立ち上がり、私は何度もその場で頭を下げた。
「はい、ありがとうございます、はい」
また私は頭を下げた。
その光景を不思議そうに、遠くから子供たちが見てる視線を私は感じ、少し自分が恥ずかしくなった。
「採用で、月曜日からよろしくね」
その時、すこし柔らかい口調で電話主は私にそういった。
「あ、ありがとうございます。よろしくお願いします」
深く頭を下げると私は電話を切った。今度は子供たちとその母親たちの視線を私は感じた。視線の先を見ると気まずそうに皆、目をそらしてしまう。
なんだか居心地が悪い気がしたが、私はベンチに再び腰をおろした。
…ノドか乾いた
率直にそう思った。
帰りはコンビニに寄ろう、あとは髪を切って…
急に私の頭の中に久しく忘れていた、多くの思考回路がよみがえってくるのがわかった。そして期待と不安が…
ベンチから立ち上がり、私は雲一つない青空の下に出て行くと大きく力一杯深呼吸をした。新しい酸素を体が喜んでいる気がする。私は今日までとは少し違う朝を想像し、期待と不安二つを感じながらゆっくりと歩き出した。




