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未定  作者: sherio
金髪
4/5

4



「ねーねー、こんな狭い路地にほんとにレストランなんてあるの?」



後ろから付いて来るティールが訊ねてきた。



「誰がレストランだって言った?」



「え?レストランじゃないの!?」



「いいから黙ってついて来い!」



「はい…」



俺が怒鳴ると、ティールはシュンとした表情になった。




こいつ…なんか…


そうだ、犬みたいだ。

犬っころだな。




廃れたビルとビルの間の細い路地を奥まで進むと、左側のビルの壁に扉が見えてくる。


俺はドアノブに手を掛けた。



「ここだ」



「…ここ?」



ティールはキョトンとした様子で中を見回す。


ドアの横にある電気のスイッチを押すと、薄暗い部屋がパッと明るくなった。



中は広いが窓は無く、冷たいコンクリートの壁と床が広がり、随分汚れたソファーやベッド、ボロボロの家具やガラクタなどで溢れかえっている。



「今何かもって来るから、そこらへん座っとけ」



俺が言うと、ティールは恐る恐るソファーに腰掛けた。




冷蔵庫を見ると…


お、牛乳が残ってる。

あと、前にかっぱらってきたサンドウィッチ。


…これで、今日の俺の夕飯はおあずけだな。

ま、空腹には慣れてるし別にいいんだけど。




「これでいいだろ。文句言うなよ?」



プラスチックの使い捨てコップに牛乳を注ぎ、サンドウィッチと共にソファーの前の小さいテーブルに並べる。



「わぁっ…!!何日ぶりのご飯だろ!?いっただっきまーす!!」



「…おう」



…もっとぶーたれるかと思ったら、文句つけるどころか目をキラッキラ輝かせながらがっつき始めた。



「ほんとに腹へってたんだな」



「ぶおだどぼぼっだぼ!?ぼぶばぶぼばん「食いながらしゃべるな」



「ふぁい…」



ティールはあっという間に飯をたいらげ、牛乳を飲み干した。



「--ぷはーっ!!生き返ったあ!!ほんと~~~にありがとう!!…ちょっと足りなかったけど」



「あぁ?」



「い、いえゴメンナサイなんにも言ってません!」




食い終わってから文句つけやがったコイツ。




「ところで、ここはなんなの?」



ティールはキョロキョロしながら言った。



「んー……まぁ俺と同じ境遇の奴らで暮らしてる、家みたいなもんだ」



「ヴァンと同じ境遇?」



「だから…親に捨てられた、いわゆるストリートチルドレンってやつだ」



「え…ええ!?捨てられた…!? か……かわいそうに…」



「なに泣きそうになってんだよ?お前、そういう奴らに会ったことねえのか?」



「あるわけないよ!!僕の故郷では、みんな親子供想い合ってて、子供を捨てるなんてありえない!!ひ…ひどいことするもんだなぁ…」



「お前…相当甘い環境で育ってきたんだな…」




つーか、俺にはこの世にそんな街があることが信じられねーけど。




「ううう……ヴァ、ヴァン…きみも、つらい目に合ってきたんだね…ううう…」



「別に大してつらかねーよ…ここの奴らは皆そんなんだし…つか、泣きすぎだろ」



「だだだってさ…うううううう」




なんなんだこいつマジで。

ぼろ泣き。


こんな泣くやつに会ったこと無いから、泣く意味がわからない。


こいつ、やっぱめんどくせーわ!




「で、お前はそんな幸せなとこで育ってきたってのに、何でここに来たんだ?さっきの下衆が言ってた通り、この街は一度入ったら出られねーのに」



「な…なんでって言われても……なんとなくここに導かれたってゆーか…」



ティールはエヘヘ、と照れ笑いしながら頭を掻いた。



「お前、やっぱ意味わかんねーわ。で、何者なんだよ?」



「僕? うん、僕はね!」



ティールはパァッと笑顔になり、胸を張って言った。



「魔王の息子なんだ!!」














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