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ジャリ…
俺が一歩踏み出した瞬間、金髪の様子が変わった。
金髪の周りに、変なオーラみたいなものが渦巻きまとわりつく。
…なんだありゃ…!?
「許さない…お前ら、やっぱ許さない…」
「お!?なんかする気だぜ!!」
「魔法でも使う気か!?」
「ハハハッ、おもし……ッ!!」
俯いていた金髪が顔を上げた瞬間、下衆共の顔から笑みは消え、恐怖に引きつっていった。
「その目…お前ッ…」
目…?
なんだ?
何が起こってるんだ?
風もないのに、金髪の髪がゆらめきだす。
「いいか、お前ら…10数えるからここから立ち去れ…でなきゃ……わかってるよね。いち…に…」
金髪が低い声でカウントを始めた。
「おおおおおいっいくぞ!!」
「あ…ああ…」
「やべぇ…あれはやべぇ」
下衆共は慌てて逃げ出す。
俺の横を通った下衆は怯えた顔で、「悪魔だ…」と呟いていた。
?
悪魔?
「ふう……ねえ君、だいじょうぶ?」
金髪は少年に手を差し出す。
「ありがと…う……うわ…」
少年は笑顔で顔を上げるが、お礼を言い終わる前に顔が恐怖に歪んだ。
「う……うわああああああああああ!!」
結局金髪の手も借りず、こけそうになりながらも走り去っていった。
…なんなんだよ…?
俺は金髪に興味が湧き、様子を伺うことにした。
しばらく金髪の後姿を見ていると、先ほどのオーラはだんだん薄まっていき、髪のゆらめきも止まった。
「…はぁ…」
がっくり肩を落とし、ため息をつく。
随分寂しげだな。
しばらく肩を落としていた金髪は、ゆっくりと向きを変え、こちらへと歩き出した。
頭は下げたままだ。
が、俺の横を通過する瞬間、金髪はさも気づいていた様子で驚きもせず顔を上げ、俺の目をじっと見つめて言った。
「きみ誰?」
目…
さっきの下衆共は、目にビビッてたよな…
丸くクリッとしていて、瞳は綺麗なライトブルー。
…怯える要素がどこにある?
顔も整ってはいるが幼く、12、3歳と言ったとこか?
迫力なんて欠片もない。
「…どうしたの?なんでそんな僕を見つめるの?え?惚れたとか言わないでよ?」
金髪の声ではっとする。
あれ?
俺いま、こいつ見つめてた?
金髪は恥ずかしそうに照れ笑いをしながら口を開いた。
「君もしかして僕のこ「俺はヴァンだ。この街のストリートチルドレン達のリーダーみたいなもんだよ。お前は?」
「………自己紹介はや…」
「さっきから見てたけど、お前何者?」
「僕?僕の名前は、ティール。何者かは……えっへっへ!ひみつ~!!」
ティールはべろを出しながら笑う。
イラッ。
なんだ?
なんかいらいらすんぞ。
こいつ…何なんだ?
「ん?ねぇ知りたいの?僕のこと!!」
「もういい」
俺がその場を去ろうと一歩踏み出すと、ティールが言った。
「知りたいなら教えてあげてもいーよ?」
「じゃあ教えろよ」
「でも僕、お腹減っちゃった……ご飯、くれたら…」
「バカか!俺だって腹減ってるわ!お前にやるようなモンもってねーよ!」
「ねぇぇぇぇおねがぃぃぃぃ!!!僕ホントーーーにペコペコどころかベコベコで死にそうなのーーー!!この街に入る前から食べてなくてほんとにしにそーなのーーー!!おねがいだずげで~~~~~!!!」
「っ…!!」
ティールは涙をボロボロこぼしながら、俺の腕にしがみつく。
なんだこいつ。
なんだこいつ!?
なんでこんな表情ゴロゴロ変わるんだ!?
俺の周りにこんなヤツいねーぞ!
「ねぇぇぇぇなんでぼずどぅがだぁぁ」
「わ…わかった!わーったわーった!!わかったから泣き止め、手離せ!!」
「ほんと!?」
俺が言うと同時にティールはぱぁっと笑顔になり、手を離した。
まさか
演技…じゃねーよな?