表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

I to sb.

隻眼で見るもの

作者: kanoon

これ以上何を望めって言うんだろうね。

これ以上何を分かれっていうんだろう。



["What a queer tale!"]



私は笑っていた。君が笑っているから。

私は抱き締めた。君が泣いているから。

そんな単純なことで、二人の世界は回っていたはずなんだ。

だけどどうしたのだろう、それだけじゃいられなくなったのは。


「うん」とか「アレ」とか、会話にならない会話をしていた。それで通じるから、特別な気がしていた。

だけど本当はいけなかったんだ。『空気を読む』なんて技、必要ないんだ。

たまに笑いあって、だけどもう会うことも少なくて。今じゃこんなにボロボロな仲。

こんなになるまで私たちは気付かなかったなんて。



昔君が泣いたとき、私は君を追いかけた。そして何も言わずそばに居た。

『友達』って、きっとそれだけでいいんだよ。それ以上も以下も望まない。

同じ過去や記憶を共有して、思い出し笑い。そんなことも大事じゃない?

だけどもう、どちらかがどちらかを見つめるだけ。すれ違うだけの日々。

それで分かったフリなんて虚しいだけなのにね。


もし君がまだ私との思い出を抱えているなら、私は喜んで君を抱き締めよう。

そしたら「おかえり」って、心の中で言うんだ。

「懐かしいね」

そう言って隣で笑ったこの前の君も、私は覚えているんだから。

手遅れになる前にもう一度一緒に居られるようになればいいね。

だけど、溝は埋まらなかった。私も君も臆病すぎたから。


臆病で変わることを恐れた。君はきっと平和な日常を選んだろう。

私が面倒な道を通ることを避けたように。

そして途切れた糸は二度と絡むことはなく、永遠に近くて遠い平行線。

私は君と最後に会ったその日で止まってる。そこで泣いている。

君はそれでも私を置いていく。私が何度「待って」を叫んでも。

届かないから、心の中の言葉は。


何度も何度も繰り返した別れは、今も昔も終わりがなかった。

何度も何度も繰り返した「ごめんね」は、今回は言われることなく宙に浮いて漂っていた。

だから私はそれを吸い込んだ。もう戻れないと知って。

「昔に戻りたい」

そう言っていた日々も、ごめんの裏に隠して。



(なんて奇妙な話だ!)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
[一言] 切なくて一途な思いが描かれていますね。 詩のようなお話でした。 次作も楽しみにしています。
2011/11/10 21:14 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ