隻眼で見るもの
これ以上何を望めって言うんだろうね。
これ以上何を分かれっていうんだろう。
["What a queer tale!"]
私は笑っていた。君が笑っているから。
私は抱き締めた。君が泣いているから。
そんな単純なことで、二人の世界は回っていたはずなんだ。
だけどどうしたのだろう、それだけじゃいられなくなったのは。
「うん」とか「アレ」とか、会話にならない会話をしていた。それで通じるから、特別な気がしていた。
だけど本当はいけなかったんだ。『空気を読む』なんて技、必要ないんだ。
たまに笑いあって、だけどもう会うことも少なくて。今じゃこんなにボロボロな仲。
こんなになるまで私たちは気付かなかったなんて。
昔君が泣いたとき、私は君を追いかけた。そして何も言わずそばに居た。
『友達』って、きっとそれだけでいいんだよ。それ以上も以下も望まない。
同じ過去や記憶を共有して、思い出し笑い。そんなことも大事じゃない?
だけどもう、どちらかがどちらかを見つめるだけ。すれ違うだけの日々。
それで分かったフリなんて虚しいだけなのにね。
もし君がまだ私との思い出を抱えているなら、私は喜んで君を抱き締めよう。
そしたら「おかえり」って、心の中で言うんだ。
「懐かしいね」
そう言って隣で笑ったこの前の君も、私は覚えているんだから。
手遅れになる前にもう一度一緒に居られるようになればいいね。
だけど、溝は埋まらなかった。私も君も臆病すぎたから。
臆病で変わることを恐れた。君はきっと平和な日常を選んだろう。
私が面倒な道を通ることを避けたように。
そして途切れた糸は二度と絡むことはなく、永遠に近くて遠い平行線。
私は君と最後に会ったその日で止まってる。そこで泣いている。
君はそれでも私を置いていく。私が何度「待って」を叫んでも。
届かないから、心の中の言葉は。
何度も何度も繰り返した別れは、今も昔も終わりがなかった。
何度も何度も繰り返した「ごめんね」は、今回は言われることなく宙に浮いて漂っていた。
だから私はそれを吸い込んだ。もう戻れないと知って。
「昔に戻りたい」
そう言っていた日々も、ごめんの裏に隠して。
(なんて奇妙な話だ!)