すみれ石の呪い
ここにいるもので成人男性の腰を超える身長を持ったものはいないだろう。みんな大人の半分にも満たない小さな手に豆を作り、一心不乱にツルハシを地面に突き刺している。無造作なように見える動きでも、彼らの手元には少しずつ紫色に輝くものが浮かび上がる。決してそれに傷一つつけることなく、土を払うかのようにそれを取り出す手つきは、まるで職人のようだ。彼らはみな、背中にカゴを背負っている。掘り出した鉱石はそこに放り込まれていく。カゴの隙間からもれる紫色の光は、夜になるとまるで命あるイルミネーションのようだ。だから、ここは主要惑星に住む人々からヴィオレットと呼ばれている。そしてここで掘り出される鉱物はすみれ石、ここで働く子供たちは花摘と呼ばれている。
僕は花摘の一人。カゴがそろそろいっぱいになってきたから、笑顔ですみれを渡して来なくてはいけない。なるべく無邪気に、可愛く、従順に。どうして僕らが笑っているか気になるって? 反逆の意思がないことを示すためさ。この前も泣いていた子が殴り殺されていた。顔が腫れ上がって、体のあちこちが変な方向に折れ曲がっていた。別に嬉しいから笑うわけじゃない。そもそも、あの職人技で掘り出されたすみれたちを渡しても、頭を撫でられるどころか、あいつらは笑顔のひとつさえも見せない。赤ちゃんが笑うのと一緒さ。殺されないための、必要最低限のマナーだ。僕らは奴隷で、小惑星に住む。あいつらは人間で惑星に住む。そして僕らは道具で、あいつらは命だ。これは生まれた時から決まっていたんだよ。どうして子供しか居ないかって?単純な話さ。死ぬから。ここに大人の腰を超える高さまで成長した子はいないよ。だから僕もあと少しかな。すみれ石の呪いさ。僕らはみんな大人にはなれないんだ。使用期間は長くて10年かな。そんな悲しそうな顔をしないで。この世界で僕らのためにそんな顔をするひとは多分貴方だけだ。でも、そんなに悲しまなくても良い。僕らは、悲しまれるだけの価値を持って生まれた命じゃないんだ。不思議だと思わない?もし、大人になる花摘がいないのなら、今の花摘はどこからきたのか。僕らはここで生まれた訳じゃないんだ。みんな捨て子なんだ。いらない子。生きる価値のない子。ここはそんな子を生かしてくれるところ。昔で言う、孤児院みたいなところ。ほら、悲しいところじゃないでしょ? ここは、幸せな場所だよ。だから、構わないで。見せないで。知りたくない。分かりたくない。知ってしまったら...きっと戻れない。
中学生の頃のやつ最近発掘してきました。




