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異世界転生よりタチが悪い! 〜2025年までに一億円稼がないと、俺は5年前の絶望に強制送還される〜  作者: 彗 暦


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4 監視者の目と最初の成果

西暦2020年3月中旬。


中古のノートPCの画面に表示された「監視者より」のメッセージは、すぐに消えた。しかし、俺、三上 悟の心臓は、未だ警鐘を鳴り響かせている。


「監視者……?どういうことだ」


俺の知る未来には、こんな謎のシステムも、誰かの介入も存在しなかった。この「死に戻り」は、誰かに仕掛けられた、俺だけが強制参加させられているゲームだとでもいうのか?


『今回のポートフォリオは完璧です。』


完璧。その言葉が、俺の未来知識による選択を肯定している。つまり、この監視者は俺の行動、そして未来の記憶の正確さを把握している。


「俺が未来を知っていることを知っている……もし市場を操作されたら、俺のチートは通用しなくなる」


俺は全身から冷たい汗を噴き出した。だが、今はそれどころではない。この恐怖を乗り越えるには、金を稼ぐしかないのだ。


連日、テレビとネットニュースは、歴史的な株価暴落を報じ続けている。世界中がパニックに陥り、街からは人が消えた。俺が全財産113万円を投じた証券口座の評価額は、容赦なく目減りし続ける。


「80万円……」


底値の三月下旬、評価額は約80万円にまで落ち込んだ。全財産の3割が溶けたことになる。理屈では「買うべき時」だと理解していても、目の前の数字は過去の失敗の恐怖を呼び起こす。


「売るな。売ったら終わりだ。これは底値だ、最高のバーゲンセールだ!」


一度目の人生で手を滑らせた「損切り」ボタンから指を遠ざけ、俺はPCを閉じた。見たら売ってしまう。今は未来の記憶が告げる**『反転の時』**を信じて、耐え抜くしかない。


2020年8月。


俺の投資は、最初のピークを迎えた。


4月から始まった株価の回復は、未来の記憶を裏切らなかった。


在宅ワークの普及で業績が急伸したA社、巣ごもり需要でユーザーを増やしたB社。そして、最も爆発的な成長を期待していたC社は、俺の記憶よりも少し早く、次世代技術を発表し株価が急騰した。


「予定通りだ……いや、それ以上だ!」


俺は一気にマウスを操作し、全銘柄の利益確定ボタンを押した。ここから先に訪れる「小さな調整」も知っている。最大限の利益を確保するには、今、売り抜けるのが最適解だった。


取引完了の文字が表示され、証券口座の残高を確認する。


手数料や税金を引いた後の純資産は、冷徹で、そして眩しかった。


「10,250,910円」


開始から約8ヶ月。12,350円だった初期資金を、見事に1,000万円の大台に乗せた。


椅子にもたれかかり、深いため息をつく。この勝利は、未来の記憶というチートと、一度目の人生で味わった恐怖への耐性が生んだものだ。


「よし。次は、次の波に乗る」


次のターゲットは、間違いなく仮想通貨だ。世界的な金融緩和と、デフレへの不安から、市場が熱狂的なバブルに向かうことを俺は知っている。


1,000万円という資金があれば、次に仕掛ける「仮想通貨投資」の波に、十分な規模で乗ることができる。目標達成への道筋は、さらにクリアになった。


だが、口座の残高を確認し終わった直後、ノートPCの画面が突然、ブルースクリーンになり、真っ黒な画面に白文字で、たった一言だけが表示された。


『順調です。』


メッセージはすぐに消え、PCは正常に戻った。


「くっ……!」


監視者は、俺が大きな成果を上げる瞬間を、ずっと見ていた。そして、まるで「ご褒美」のように、この不気味なメッセージを送りつけてきた。


俺の行動は、このシステムの設計者の「計画」通りに進んでいる。その事実は、勝利の喜びを冷やし、得体の知れない焦燥感に変えた。


目標まで、あと8975万円。監視者の監視を振り切るためにも、さらに加速しなければならない。

目標金額100,000,000円

現在資産10,250,910円株式投資による純利益:約910万円達成!

残りの時間1,613日2020年8月時点

稼ぐべき金額89,749,090円目標まで、残り約8975万円!

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