表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/8

ep.6 バランス相対性理論と人数の単純算数 3日目

教室を覆っていた闇の衣がはがされ、窓から光が差し込む。


『夜が明け、朝になりました。村人たちは、話し合いを始めてください』


頭の中に響くゲームマスターの声。


そして、3日目が始まった。


教室の真ん中には、【⑧岡崎 慎八】の死体。


「まぁ、当然の結果だな。」


「そうねぇ・・・で、次は、私の順番ね。」


「まぁ、仕方ない。騎士なんだから噛まれるのも仕事だ。」


そう話をしながら、【⑤五木 真央】と、確定白の【③山本 三伸】が死体を隔離カプセルに放り込む。


チャイムの後のモニター画面は、もちろん【⑧岡崎 慎八】は【占い師】、【⑥斎藤 甚六】は【村人】であった。


■教室に残っている人物

【①松田 一花】

【②佐々木 仁朗】村人とみなされている

【③山本 三伸】 占い結果で、人狼ではない

【④正岡 四季】

【⑤五木 真央】 騎士

【⑦川相 七瀬】



 【 第6話 手のひら返し 】



「しかし、50%外したかぁ・・・」


【③山本 三伸】が、天井を見ながらひとりつぶやく。


「でも、今日は、75%だから、当てなきゃダメね。」


【⑤五木 真央】は、3人の顔を見比べながら言う。


もちろん見比べられているのは、【①松田 一花】【④正岡 四季】【⑦川相 七瀬】の3人だ。


「ちょっと議論する前に聞きたいことがあるんだけどいい?」


【⑦川相 七瀬】が、声をあげた。


「何かしら?」


【⑤五木 真央】が答える。


「いや、昨日の投票結果を確認したんだけれど、【②佐々木 仁朗】君だけ、自分に投票しているのよ。これ何?」


「あっ、ごめん。ミスったんだ。いや・・自分の名前があるのって変だなって思って、触っちゃったら、投票になっちゃったんだ。これ、自分にも投票できるシステムなんだね・・・今回は、致命的にならなかったけど、下手に触っちゃうと村人側が負けちゃうかもしれないから、投票の時は気を付けないといけないと思う。」


「あぁ、そういえば、自分に投票することもできたな。まぁ、初めて参加するんだから、ミスは、つきものだ。仕方ないさ。」


頭を下げてあやまる【②佐々木 仁朗】を【③山本 三伸】が、フォローする。


どうやら完全に信頼を得られているようだ。


「まぁ、一応、納得しとく。【②佐々木 仁朗】君は、疑う対象じゃないから・・・」


「そうだな。今日は、【①松田 一花】【④正岡 四季】【⑦川相 七瀬】の3人から選ぶぞ。」


【③山本 三伸】が、話を進めた。


「っていうか、今日は、【①松田 一花】さんでしょ?」


【④正岡 四季】が、いきなり【①松田 一花】を攻撃し始めた。


「なんでよ?私を選ぶ根拠なんて持ってないでしょっ!」


「あるわ。バランスよ。昨日、あなたの推した【⑥斎藤 甚六】君が隔離されて、村人だった。だったら、相対的に考えると、【①松田 一花】さんを隔離するのが、一番バランスがいいと思う。」


「バランスって、それって根拠でも何でもないじゃない。そんなことで隔離するっておかしいわよ。あなたこそ、人狼じゃないのっ?」


「私、あなたが人狼だなんて言ってないわ。バランスを考えたら、あなたを隔離すべきって言っただけ。【⑥斎藤 甚六】君が村人だった以上、それを推した人が人狼か狂人って可能性が少し高いと思うから。人狼じゃなくても狂人の可能性もありえるって思ってるわ。」


「ふーん。でも、それって【①松田 一花】さんが村人だったら、明日は、【④正岡 四季】さんが、隔離されるってことになるけれど、それでいいのかな?」


【⑦川相 七瀬】が、面白そうに【④正岡 四季】にたずねた。


「えっ?なんて言ったの?【⑦川相 七瀬】さん。」


【④正岡 四季】は、獲物を見つけた狼のように、【⑦川相 七瀬】に対して聞き返した。


「なによ。だから【①松田 一花】さんの表示が村人だったら、明日は、【④正岡 四季】さんが、隔離されるってことでいいのね?って言ってるの。」


「ごめん。やっぱり【⑦川相 七瀬】さんを隔離することを推すわ。」


その答えを聞いた【④正岡 四季】は、手のひらをかえすように言った。


「何言ってるの?さっきまで【①松田 一花】さんって言っておいて、次は、私?あなた言ってることがおかしいわよ。」


「おかしくないわ。【①松田 一花】さんが村人なら、これを隔離して明日が来た場合、村側の負けがほぼ決定するんだもの。それが分からないっていうことは、【⑦川相 七瀬】さん、あなたは、人狼と狂人と村人の数を計算していない。ってことは、計算する必要がない役職ってことよ。つまり、あなたこそ、人狼だわっ。人狼は、人数を考えなくても最終的に生き残ればいいんだから。」


そう、【①松田 一花】が村人であったならば、人狼陣営の勝利なのだ。


■教室に残っている人物

【①松田 一花】

【②佐々木 仁朗】村人とみなされている

【③山本 三伸】 占い結果で、人狼ではない

【④正岡 四季】

【⑤五木 真央】 騎士

【⑦川相 七瀬】


現在残っているのは、この6人。


もし、この中から、村人が隔離され、夜に騎士が噛まれたならば、残り4人。


明日は、4人の中に、人狼が1人。狂人が1人になる。


とすると、人狼は、自分の正体を皆に明かす。


そして、狂人も自分の正体を明かす。


なぜならば、人数が2対2で、拮抗するから。


そう・・・2対2の同数となるため、「隔離者は無し」という投票結果となるのである。


そうして、夜に村人が噛まれたならば、次の日に残るのは、村人と狂人と人狼。


狂人は、人数としては、村人と数えられるため、表面上は、2対1と村人が多いようにカウントされるが、投票は逆。


狂人は、人狼を勝たせるよう動くため、人狼が隔離されることは無い。


人狼側が勝利条件を満たすことができるのである。


【④正岡 四季】は、このことを指摘し、【⑦川相 七瀬】を糾弾したのだ。


そして、頭の中にゲームマスターの声が響いた。


『投票まで、10秒です。』


黒板が残り時間をカウントダウンする。


『それでは、投票の時間です。人狼陣営だと思う人物の番号をタッチしてください。』


■投票の選択肢

【①松田 一花】

【②佐々木 仁朗】村人とみなされている

【③山本 三伸】 占い結果で、人狼ではない

【④正岡 四季】

【⑤五木 真央】 騎士

【⑦川相 七瀬】


【②佐々木 仁朗】は、【⑦川相 七瀬】の番号をタッチし、投票を行った。


なにもない空間に、皆が手を伸ばし投票するのが見える。


『投票を締め切りました。隔離されるのは【⑦川相 七瀬】です。』


  ガコンッ


隔離カプセルが【⑦川相 七瀬】を吸い込んで、教室にまた恐ろしい夜がやって来るのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ