ep.4 カミングアウトと占い結果 1日目②
「ちょっと教えてくれ。カプセルに隔離されても、村人側が勝利したら、大丈夫・・・助かるんだよな?」
【②佐々木 仁朗】は、皆にたずねるように声をあげた。
「ん?あぁ、勝利したら、助かる。カプセルが空いて、さっき死んでた【⑩才市世野 義正】さえ、生き返る。っていうか、お前が占い師だったのか。さっさと占いの結果を言え。」
答えた【⑧岡崎 慎八】が、【②佐々木 仁朗】に占い師なら結果を言うようにうながす。
「あぁ、じゃぁ役職を公開するよ。俺は・・・」
【 第4話 カミングアウト 】
「俺は・・・村人だ。このまま占い師が出てこないなら、俺を隔離してくれ。」
「お前、何言ってるんだ?頭おかしくなったのか?」
【⑧岡崎 慎八】は、焦ったような顔で【②佐々木 仁朗】を見ながら言う。
「いや、冷静だよ。このまま占い師が出てこなければ、間違って占い師を隔離する可能性がある。なら、特別な役目を持っていない村人の俺が、隔離された方が、村に有利だ。それに、俺は、これがこのゲーム1回目で経験値が一番低い。なら、他の人が隔離されるより、俺が居なくなった方が、戦力ダウンが少ないと思った。違うか?」
「ちっ・・つまんねーの。占い結果・・・【⑨大島 久美】が人狼なっ。」
【②佐々木 仁朗】の発言を聞いて、【⑧岡崎 慎八】が、占い結果を発表した。
なんと、さんざん「占い師出てこい」と言っていた、【⑧岡崎 慎八】こそが、占い師であったのだ。
「まぁ、これで【②佐々木 仁朗】君は、村側って考えていいよね?」
「うん、さすがに、狂人も人狼もあり得ないわね。さすがに人狼側でこれやってたら、利敵行為でしょ。」
それを受けて【⑦川相 七瀬】が言うと、【⑤五木 真央】も、それに同意する。
しかし、それこそが【②佐々木 仁朗】の狙いであった。
【②佐々木 仁朗】は、気づいていたのだ。
皆が、黒板の残り時間を見ている中、【⑧岡崎 慎八】だけが、黒板を見ずに【⑨大島 久美】の表情をじぃっと観察していたことを。
そうして、7分を過ぎても結果を言わず名乗り出ない占い師・・・
これは、【⑧岡崎 慎八】が「【⑨大島 久美】が人狼である」という結果を持って、もう一人・・・狂人あたりが村側のかく乱のため、偽の占い師で出て来るように誘導している可能性が高いと判断した。
ならば、一番自分が助かる可能性がある方法・・・つまりは、人狼陣営が勝利する方法は、偽の占い師で出ることではなく、村人として役職を公開し、皆を信用させること。
全ては、【②佐々木 仁朗】の手の平の上で物事が進んでいた。
「ちょっと待ってよ。違うわ。私が占い師よ。結果は、【②佐々木 仁朗】が人狼よっ!」
振り向くと、【⑨大島 久美】が【⑧岡崎 慎八】を睨みながら仁王立ちで叫んでいた。
「いや、それは、通用しないだろっ。人狼だって言われてから、それは無い無い。」
【⑧岡崎 慎八】が、笑いながら言い返す。
「ううん。私、【⑧岡崎 慎八】に人狼だって言われる前に言ったよ。『人狼は、【①松田 一花】と【②佐々木 仁朗】って可能性も頭に入れて置いた方がいい』って。夜の占いで【②佐々木 仁朗】が人狼って分かっていたから、そこを助けている【①松田 一花】が人狼の可能性があるって指摘したんだよ。どう?矛盾ないでしょ。」
「おい、これ、どっちなんだよ?」
【⑥斎藤 甚六】が、おろおろしながら、つぶやく。
「まぁ、この場合は、隔離する人間を『白黒ついてない人から選ぶ』か、『黒が出ている【②佐々木 仁朗】君か、【⑨大島 久美】さんから選ぶ』っていう選択になるんだけど・・・今回は『【⑨大島 久美】さんを隔離する』の一択ね。他の選択肢は、無いわ。」
【⑤五木 真央】が、冷めた口調で言う。
「なんでよ。私の説明、説得力あったでしょ。」
「うん。ちょっとは、あったよ。でも、自分に人狼だって結果が出てそれを指摘された後、「私は、占い師だ」って言われても、信用できない。それにね。【②佐々木 仁朗】君が、村人すぎるのよ。もし、あなたの結果が正しいなら、人狼が、「隔離してくれ」って自首したことになるの。あり得ないでしょ?」
「ほ・・ほら、初心者だから、そういうこともあるかもしれないし・・・」
「そうね。その可能性も無きにしもあらず。だから、あなたを隔離して、モニターに【占い師】って出たら、次の日【②佐々木 仁朗】君を隔離するわ。占い師を失うことになるけれど、少なくとも【人狼】を一人減らせる。最悪の結果ではないの。逆に、あなたを隔離した結果が【人狼】であれば、占い師が占わなくても【②佐々木 仁朗】君が【村人】であることがほぼ証明できる。村側のメリットがあまりに大きいのよ。あなたが本当の占い師なら、隔離されることは、受け入れられるはずよ。」
「くっ・・・」
【⑤五木 真央】の言葉に、【⑨大島 久美】は、返す言葉も無い。
「みんなも、それでいいわね?」
こうして、初日に隔離カプセルに入るのは、【⑨大島 久美】という流れが出来上がったのだが・・・
・・・っていうか、どうやってカプセルに入れるんだ?自分で入ってくれたらいいけど、嫌がったら、無理やり連れていくのか?
どのように隔離カプセルの中に【⑨大島 久美】を入れるのか?
その方法が、分からない。
そんなことを考えていると、【②佐々木 仁朗】頭にゲームマスターの声が響いた。
『投票まで、10秒です。』
黒板を見れば、残り時間が10秒、9秒、8秒・・・と秒数が、ゼロに近づいて行っている。
『それでは、投票の時間です。人狼陣営だと思う人物の番号をタッチしてください。』
■投票の選択肢
【①松田 一花】
【②佐々木 仁朗】=⑨の結果で人狼
【③山本 三伸】
【④正岡 四季】
【⑤五木 真央】
【⑥斎藤 甚六】
【⑦川相 七瀬】
【⑧岡崎 慎八】占い師
【⑨大島 久美】占い師=⑧の結果で人狼
【②佐々木 仁朗】の目の前・・・空中に、脱落している【⑩才市世野 義正】を除いた全員の名前と番号が浮かび上がった。
突然現れた光景に少し戸惑ったものの、彼は、迷うことなく【⑨大島 久美】の番号をタッチした。
おそらく、他の皆の目の前にも同じものが見えているのであろう。
なにもない空間に、皆が手を伸ばしているのが見える。
そうして、再びゲームマスターの声。
『投票を締め切りました。隔離されるのは【⑨大島 久美】です。』
ガコンッ
ゲームマスターの声と同時に、教室の後ろの隔離カプセルが動いた。
それは、ものすごいスピードで【⑨大島 久美】の前に移動すると、まるで生き物のように口を開け、中へ彼女を吸い込んだ。
初日の隔離者は、【⑨大島 久美】。
こうして初日が終了し、10人だったメンバーは、8人へと減少したのであった。