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ep2. 最初の犠牲者は・・・

【②佐々木 仁朗】に、この人狼ゲームのルールを説明し始めたのは、【①松田 一花】であった。


「じゃあ、[人狼]のルールを説明するね。そんなに難しくは、ないから・・・。基本は、[村人チーム]と[人狼チーム]に分かれて戦う心理戦だよ。それぞれ[役職]っていう秘密の立場を持っている人もいて、それをもとに行動するの。で・・・目指すゴールが両チーム違うんだ。勝利条件って言ってもいいね。[村人チーム]は、教室に潜んでる[人狼]を見つけて全員隔離することが目的。逆に[人狼チーム]は、村人たちをどんどん[襲撃]して、[人狼]の人数を村人と同数にするのが勝ち条件。ゲームは、[昼]と[夜]のターンに分かれてて、夜のあいだに人狼はこっそり話し合って、誰か一人を[襲撃]できるの。で、朝になると『??さんが殺されました』って発表されるの。昼になると、みんなで誰が人狼かを話し合って、怪しい人に投票して、一人を[隔離]するんだ。でも、誰がどの[役職]なのかは基本的に秘密だから、ウソをついたり、推理したり、駆け引きが大事っ。で、[役職]には、[占い師]とか[騎士]とか、特別な能力を持った人もいるの。[占い師]は、毎晩一人を占って、その人が[人狼]か[人狼でないか]を知ることができる。[騎士]は、夜に自分以外を1人だけ人狼から守ることが出来るけど、2日連続して同じ人は、守れない。[人狼チーム]にも、[役職]が居て、[狂人]って言うんだけど、[村人]で、[人狼の味方をする]人。この人は、村人が、勝ったら負け。人狼が勝ったら勝ちだから、かなり特殊だね。ウソを見抜く力と、[役職]なら、自分の正体を隠すかどうかを考えることも必要だね。そこらへんは、演技力も、試されると思う。初めてなら、とりあえず空気を読んで動いてくれたらOKだと思うけど・・・かなり早口だったけれども、分かった?」


「あぁ、1回やったことがあるから、ゲーム自体は、分かる。けど、どこまでが真面目な話なのか分からなくて混乱してる。」


「んーと・・・そろそろチャイムが鳴るから。それで分かると思う。」


 キーン コーン カーン コーン


チャイムの音と同時に、ゲームのようなメッセージが、黒板に浮かび上がった。


【ある日、教室で人狼ゲームをすることになった10人の高校生。それは、「ただの遊び」のはずだった。だが、次第に教室は異様な空気を帯び始めた。誰が嘘をついているのか?本当の「人狼」は誰なのか?】


その瞬間・・・机の上に置かれていたトランプのようなカードが、まばゆく光り輝く。


そう・・・それは、人狼ゲームの役職が書かれた札であった。



 【 第2話 あなたの役職は、人狼です 】



目の前で、驚くべきことが起こった。


机の上のカードが、ふわりと宙に浮いたのだ。


そうして、カードは、キラキラと輝いたまま1枚1枚が、ひとりひとりの手元へと飛んで配られる。


【②佐々木 仁朗】は、手を伸ばして、それを受取ろうとしたものの、カードは、まるでその手が無かったかのようにすり抜けて、彼の胸の中に吸い込まれた。


頭の中に声が響く。


『あなたの役職は、人狼です。残り9人の中には、あなたの仲間の人狼が1名。同じく仲間の狂人が1名います。対する村人陣営には、占い師1名、騎士1名、村人5名が所属しています。村人と人狼の数が同数になった場合、人狼陣営の勝利です。狂人は、人狼陣営に属しますが、村人としてカウントされます。それでは、健闘を期待いたします。』


 ・・・これ、本物だ。


そう、リアル人狼ゲームであった。


学級委員長【①松田 一花】の言葉は、嘘ではなかったのである。


教室に静寂と闇の衣が降り、周囲が闇に包まれた。


しかし、赤く光る【②佐々木 仁朗】の目に周りの光景は、くっきりと浮かび、クラスメイトの呼吸がうるさく感じるほど音が明敏に感じられた。


ぐるりとあたりを見渡す。


教室には、自分を入れて10人のクラスメイト・・・


■教室に居る10人のクラスメイト

【①松田 一花】は、冷静な学級委員長。

【②佐々木 仁朗】・・・休み明けの自分だ。

【③山本 三伸】は、クラスの人気者。

【④正岡 四季】・・・こいつは、いつも影が薄くて、印象があまり無い。

【⑤五木 真央】は、冗談好きで場を和ませるが、案外、油断ならないやつだ。

【⑥斎藤 甚六】は、正義感が強く感情的。

【⑦川相 七瀬】は、ムードメーカーだが、演技力が高く、騙すのが得意。

【⑧岡崎 慎八】は、理論派で、自分の考えを数字や確率で語ることが多い。

【⑨大島 久美】・・・こいつは、ふだんは人見知りで目立たない地味子。

【⑩才市世野 義正】は、言わずもがな、俺の親友。


そうして、机のきしむ音すら耳障りに感じるほどの沈黙のなか、再びあの声が響く。


『夜になりました。人狼は、仲間を確認してください。』


その声に応えるように、悠真はゆっくりと顔を上げた。


あたりは、真っ暗。


光が遮られ、教室が一枚の闇の衣に包まれているような感覚。


そうして、彼の向かいで目を開けたのは、【⑨大島 久美】。


バチリと交わった視線。


 ・・・やば・・・久美が相方かよ。


心の中で苦笑する。


真面目で目立たない地味子の久美と、さぼり魔で提出物などまともに出したことが無い自分が、コンビを組んで人狼となったことが、なんだか皮肉な組み合わせ・・・そんな気がしたのだ。


『人狼は、今日の獲物を選択してください。』


またもや声が響いた瞬間、【⑨大島 久美】の目が、赤く光り、その口が開いた。


「【②佐々木 仁朗】君、何の情報も無いし、今夜は、経験者の私が、獲物を選んでいいかしら?」


 ・・・今夜って、夜か・・・まぁ暗いし・・・そういうもんだと思えばいいか・・・


心の中で、軽くツッコミを入れながら、小さくうなずく。


その瞬間、目の前に恐ろしい光景が広がった。


 カブリッ


【⑨大島 久美】の口が、親友の【⑩才市世野 義正】の首筋に噛みついたのだ。


闇の中であるものの、【②佐々木 仁朗】の目は、首から潜血が噴き出す光景をはっきりと捉えた。


恐ろしいはずのその光景。


しかし、心が高揚しているのが分かる。


そうして次の瞬間であった。


【②佐々木 仁朗】の口は、【⑩才市世野 義正】の喉ぼとけに噛みつき、それを引きちぎっていた。


気づいたときには、教室に血の海が広がり、そのど真ん中に【⑩才市世野 義正】の死体。


最悪なことに【⑨大島 久美】と自分の制服は、血まみれで真っ赤。


 ・・・こんなの、バレるに決まってるじゃん。


そう・・・明るくなった教室に血まみれの2人が居れば、どう言い訳しようとも、クラスメイトは、彼らが人狼だと断定するに違いない。


「大丈夫よ。朝になったら、なぜかきれいになってるから・・・っていうか、人狼陣営って、こんなことを夜にしてたのね。」


「え?さっき、経験者って、言わなかった?」


「いままで8戦これに参加したけれど、全部、ただの村人だったわ。このゲーム、いままで人狼陣営が勝利したことは、1回も無いわ。生き残っている人たち全員、村陣営で生き残ったのよ。でも、今回は、人狼が勝たないと消される。頼りにしてるわよ。」


その言葉が終わるか終わらぬかの瞬間、目の前にあった血だまりが消える。


ビックリした【②佐々木 仁朗】は、自分の手元を見やるが、さっきまで真っ赤に染まっていたその手も、制服についていた血も、きれいさっぱり消えてなくなっており、気づけば、目の前には【⑩才市世野 義正】の死体がひとつ残されるだけであった。

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