94 パーティーのホストとして
馬車が離れていくのを背後に感じながら、四人は屋敷のなかへと足を踏み入れる。その途端。
『お待ちしておりました。ようこそ、当屋敷へ』
玄関に並んだ数十人の使用人達が、一斉にシャンディー達へと頭を下げながら出迎えの挨拶を述べた。彼らは海を割るように左右に分かれており、一瞬びっくりするシャンディー達へと今度はその道の先、巨大できらびやかなシャンデリアに照らされた階段の上から声が降ってくる。
「ようこそ、いらっしゃい、シャンディーさんにアリエスさんにピナさん」
そこには豪華なドレスに着飾った美しい姿のベリーがいた。彼女は学園のときと同じく綺麗な笑顔を浮かべながら、表面的には歓迎の意を最大限に示して、左右に分かれている階段の一方から優雅な足取りで降りてくる。
「皆さんが来るのを大変心待ちにしていたのですよ。さあ、こちらへどうぞ。他の方達は既にいらしておりますよ」
四人の前に来たベリーはそう言うと、案内するように前に立って、赤いカーペットが敷かれた通路を歩いていく。
『…………』
アリエス達は互いに顔を見合わせて小さくうなずくと、左右に使用人達が並ぶなかを、ベリーのあとについて進み始めた。ベリーの後ろにアリエスとシャンディーとピナが並んで歩き、その少し後ろにメークが続く。
「本日のディナーパーティーは立食形式ですの。うちの自慢のコックが腕によりをかけて作った、とても美味しい料理をご用意致しました」
先頭を歩くベリーが、極めて上機嫌に話している。いままで学園でも見たことがないくらいの機嫌の良さであり、まさにこの日このパーティーを心底楽しみにしていたような口振りだった。
「もし立っているのが疲れた場合でもご心配なく。仰ってくだされば、最高級で抜群の座り心地の椅子をご用意致しますわ」
気遣いの言葉も忘れない、来客に対して、パーティーのホストとして可能な限り丁寧な対応。……しかしだからこそ、アリエス達は心中で身構えてしまう。いままでのベリーと比較して、あまりにも振る舞いが丁寧すぎるから。
ピナが思わず怪訝な顔をして、小さな声でつぶやく。
「……本当に、いったいなにを企んでいるのかしらね?」
「……ピナさん、ベリーさんに聞こえますよ」
同じく小さな声で言ったのはアリエスだ。とはいえ、彼女自身もピナと同じように疑問を抱いてはいたが。
そんな二人の声が聞こえていたのかいなかったのか、しかしベリーは依然上機嫌な様子で口を開く。
「見えてきましたよ、あちらの扉の先がパーティー会場となっております」
そして五人は扉へと辿り着き、ベリーが扉を開けていく。ゆっくりと左右に開かれる扉の先には、広い部屋に並ぶ数多くのテーブルと、数十人の若い男女がいた。
アリエスとピナには、彼らのことがすぐに分かった。彼らは学園でのベリーの取り巻き達であり、アリエスやピナのクラスメイトや顔見知りも何人もいた。
またそれは彼らのほうでも同じであり、彼らはアリエス達を見るや、すぐに誰だか分かったようだった。アリエスに対してはクラスメイトとしての普通の反応、シャンディーにはシューグ家に対する驚きの反応、そしてピナに対しては……。
「え? ピナ……さん?」
「なんで彼女がここにいるの……?」
「まさか今夜のディナーパーティーを聞きつけて、悪さをしに来たんじゃあ……?」




