92 不気味
ベリーと対峙した場所から少し離れたところで、ピナとアリエスは話し合っていた。二人は木立に身を隠すようにしていて、視界の先ではベリーから説明を聞いたらしい教職員達が倒れた木のそばにおり、数人の野次馬の学生もいた。
「……どう思う? ベリーのあの言葉」
「…………、不気味、でした。あのようなベリーさんは、いままで一度も見たことがありません」
「……あたしもよ」
風が吹いたわけではないのに、二人は得体の知れない寒気と悪寒を感じていた。
「……一応、シューグさんに言っておく? もしベリーが約束を反故にしたときのために」
「いえ……それはやめておいたほうがいいかもしれません。ベリーさんがああ言ったということは、暗に他の人達には言うなということでしょうから……。もし言えば、本当になにをしてくるか分かりません」
「……確かにね」
いまのベリーは、二人には完全に未知の状態だった。もし余計なことをすれば、本当に何をしでかすか分からなかった。最悪の場合、死者が出るかもしれないと危惧するほどに。
「……ですが、分かったこともあります」
「……なに?」
「ベリーさんは、わたしが転生していることに気付いていないだろうということです。昨日図書館にいたことは見られていましたが、話までは聞かれていなかったということです」
先ほどまでのベリーの発言から、アリエスにはそうだと直感していた。
「……それが分かっていても、ねえ……」
仕方がないというように、ピナは小さな息をつく。事態は確かに進展した……しかし果たしてそれは、良いことなのか悪いことなのか。
アリエスは口を開く。その声音や顔には、ある種の覚悟が漂っていた。
「少なくとも確かなのは、次の休日のディナーパーティーは、『絶対に』参加しなければならないということです」
ピナもまた真剣な顔でうなずく。
無関係の他人に話してはいけないことと同様に、『絶対に』参加しなければ、ベリーはどんな行動に出るか分からない。
……そのディナーパーティーでなにかが起こる……ベリーがなにかを起こす……。
それだけはアリエスにもピナにも確信を持って分かっていた。
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