85 再び対峙
翌日、学園の朝のホームルームの時間帯、しかし教室のなかにアリエスの姿はなかった。
「先生、アリエスさんがまだ来ていませんが、風邪を引いてしまったのでしょうか?」
教壇に立つ教師に尋ねたのはベリーだった。アリエスの姿が見え次第、すぐにでも昨夜の招待状の返事を聞きたかったのだ。
「ユースさんなら先ほど連絡がありまして、ちょっと咳が出るので、病院に行ってからこちらに来るそうです。おそらく二時限目の授業には間に合うと仰っていましたよ」
「…………」
「さて、それでは出席を取りますよ」
教師が名簿を開き、クラスメイト達の名前を呼んでいく。返事をするクラスメイト達。ベリーの前の席では、アリエスのことを心配する小さな話し声がしていた。
……場所は変わり、学舎裏、アリエスはピナと会っていた。
「朝早くに通信魔法で呼び出してくるなんてね。まぁ、どうせ他にすることなんてなかったんだけど」
「すみません。ベリーさんに会ってしまう前に、ピナさんと話をしておかなければならなかったので」
もしもベリーに先に会ってしまったら、ピナと相談するより早く、招待状の返事を催促されてしまうだろう。返事自体は概ね決めてはいたのだが、それでも万が一の可能性を考慮してピナとの相談を先に済ませておきたかった。
返事をしてしまったあとでは、それを覆すことが難しくなってしまうから。
「それで? 話ってのはなんなの? わざわざ急に呼び出したんだから、ベリーに関することなんでしょ?」
「はい」
アリエスは一度うなずいて。
「昨夜、ベリーさんからわたしとシャンディー宛てに招待状が届きました。次の休みの日にディナーパーティーを開くから、是非出席してほしいと」
「……!」
ピナが少し驚いた顔をする。
「……奇遇ね。あたしのところにも来たわ。是非出席してほしいって」
「……! ピナさんのところにも……」
「あいつのやることだから、どうせあたしをその場で悪役にするつもりだって思ったんだけど……」
「偶然……にしては唐突すぎますね。昼間、学園にいたときにはディナーパーティーの話なんて一切出てきませんでしたから」
「あいつのことだから、その場の思いつきでやってる可能性ももちろんあるけど……これは、もしかしたら……」
……わたし達が結託していることがベリーさんにバレてしまった……?
アリエスがそう思ったとき、学舎の陰から一人の人影が歩き出してきて、二人に声をかけた。
「まさか貴方達がこんなところで密会しているなんてね」
二人がそのほうを見る。いや厳密には、位置関係的にアリエスには彼女が出てくるところが見えていた。アリエスがしまったと思ったのと同時に、ベリーが声をかけたのだ。
「べ、ベリー……!」
ピナは振り返った形になるのだが、驚きと警戒の声を出していた。しかしベリーはそんなピナには目もくれず、彼女を間に挟むようにしてアリエスを見ていた。
このとき、アリエスとベリーはいま再び対峙したのだ。場所こそ違えど、かつて、アリエスがベリーに悪役令嬢を強制されたときのように。




