84 女神の策略
「アリエスお姉さんはどうするの? まさか……」
もう一度シャンディーが問う。しかしアリエスは彼女にすぐに答えることは出来なかった。アリエスは考え込むようにしながら、口から言葉を出していく。
「……まだ、分かりません……少し、考えさせてくれませんか……明日、学園から帰るころには決めますから……」
「…………」
そんなアリエスのことを少し見つめたあと、シャンディーは承知したようにうなずいた。シューグやドロナ達も見守るように見つめていた。
……夜中……。アリエスの自室にて。アリエスは窓辺に立って、室内を静かに照らす月を見上げていた。
(ベリーさんの招待状……あまりにもタイミングが合いすぎている……)
ピナの信用を得て、シャンディーの忘れていた記憶が戻ったあとに、このベリーの招待状……確かにあまりにもタイミングがぴったりと合いすぎていた。何者かの意図を感じるほどに。
(もしかして……これも女神様の思し召しなの……?)
アリエスは丁寧な言い回しをしたが、より露骨にいえば、つまりこれは女神の策略なのではないか? ということだった。
(シャンディーの記憶が戻ったのも、女神様の力を考えれば、本来ならあり得なかったはず……女神様が、あえてあのタイミングで記憶を戻らせたと考えたほうが……自然よね……)
普通に考えれば、ただの人間の少女であるシャンディーが、なんの前触れもなく女神の力に抗することが出来るわけがなかった。あれはまさに、女神がわざと記憶を戻らせたと考えるのが妥当だった。
問題は、しかし、では、なぜ女神はそのようなことをしたのか?
(ベリーさんの招待状……これこそ、まさにベリーさんとの因縁を決着させる絶好の機会なのでは……女神様は、わたしにそうさせるために、準備と舞台を整えさせたんじゃあ……)
果たして、どこまでが偶然で、あるいは人の手による結果で、そしてどこからが女神の策略なのか……。
真実のところは、アリエスには分からない。女神がアリエスの味方なのかも分からない……否、このような、まるで退屈しのぎの鑑賞のための舞台の設置をしてくるのだ、味方だと期待してはいけないだろう。
(…………)
ここまで考えた時点で、アリエスのなかでは五割がた考えはまとまっていた。しかしまだ決定するのは早いとも思った。
ベリーの自宅に赴く以上、出来る限りの準備は整えておくべきだろう。たとえ最悪の状況が起きたとしても、少なくともシャンディーだけは無事にシューグ家に帰宅出来るように。
彼女と彼女の家族を守れるように。
(明日……ピナさんと話をしよう……ピナさんの意見を聞いてからでも、遅くはない……)
そうしてアリエスはベッドへと戻り……夜は更けていくのだった。ベリーとの決着の時が近付いている……そう感じながら。
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