81 信じるわ
(……やっぱり……女神様の力が……)
アリエスは思い知る。これらは全て女神の修正力に違いない。でなければ、ここまで徹底的に分からないということがあるだろうか、と。
女神の力は、この記事の学生とアリエスが同一人物だということを、結びつけようとはさせなかった。
「……アリエス、ちょっと、いい?」
声をかけられたアリエスが顔を上げると、ピナがいつの間にか少し離れた場所で、下向きにした手をくいくいと動かしていた。近くに来てということらしい。
アリエスが彼女の元まで近付いていくと、ピナは依然記事に引き付けられているシャンディーとメークに聞こえないように、小さな声で言う。
「あんたの言うことを信じるわ。あんたが女神様に転生させられたって話」
「え……?」
それはアリエスにとっては唐突に発せられた言葉のように感じられた。ここまで確定的な証拠が徹底的に消されているというのに、なぜピナは信じる気になったのか……その思考の経緯が分からなかったからだ。
「どうしてですか……? どの記事にもわたしを指し示すことが載っていなかったのに……」
「だからよ」
「え……?」
記事に載っていなかった。だから。アリエスを信じる。
ピナの言っていることは、アリエスにはあるいは突飛にも聞こえた。
「いくらなんでも、あまりにも徹底的に消されすぎているからよ。メイドさんも言っていたけど、ピンボケ写真なんて普通、掲載する前に気付くはずだし」
「…………」
「不良学生の名前に関しても、あまりにもピンポイントすぎるのよ、印刷ミスや何かがこぼれて読めなくなっているなんて。新聞を閉じたときに小さな虫を潰して、名前だけがちょうど読めなくなるなんてどんな確率よ」
全ての証拠が消されている。アリエスが言っていた通りに。だから。信じる。
ピナはそう言いたいのだ。
「魔法なんていうものが存在しているんだもの、女神だっていてもおかしくはないはずじゃない?」
「でも……本当に信じてくれるんですか……? 確証はないのに……記事のことだって、もしかしたらわたしがなにかの魔法を使って改ざんしたとかも……」
何がおかしいのか、ピナは口角を少しだけ上げる。
「仮にあんたがそうしたのなら、なんでまたあの学園に来たのよ? せっかくベリーから逃げられたのに、わざわざあたしにも関わったりして」
「それは……ピナさんを利用して、ベリーさんに復讐するために、とか……?」
「……ぷ……」
今度こそピナは思わず吹き出しそうになってしまったようだった。
「それをあんたがいま言ってどうすんの? あたしが信じるって言葉をそのまま素直に受け入れればスムーズに進むのに、こうして確認の問答をしているのが、あんたがそんなこと出来ない性格だって示してんのよ」
「あ……」
「ま、しいて言うなら……あたしが確信したからよ。確かに確証はない、なんかの魔法で改ざんしたかもしれない、でも……あたしはあんたの言っていたことが真実だと確信した。あたしにとってはそれで充分よ」
「……ありがとう……ございます……」
信じてもらえた。そのことに礼を述べるアリエスに、ピナは笑みを返すのだった。
「ふふ、お礼を言われるほどのことじゃないわよ」
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