80 ピンボケしている写真
アリエスが持つ新聞にも当時の見出しがでかでかと掲載されていた。いわく。
『学園の嫌われ者、シューグ家の令嬢をかばって死ぬ! いままでの悪行を悔いて、せめてもの罪滅ぼしか!』
と書かれていた。
それらの新聞記事を見ながら、アリエスはいたたまれない気持ちになる。この記事は無論、アリエスの家族や屋敷の者達の目にもついたはずだ。
自分達の娘やお嬢様が、実は学園の不良学生で、他の学生や教師達から疎まれる存在だった……そのことを知った皆は、果たしてどのような気持ちを抱いただろうか、と。
「お嬢様やメイドさんの言うことが本当なら、ここに書かれてる記事も全部は信じられないかもね。記事を売るために、いろいろと盛ってる可能性があるから」
「ですね。お嬢様をかばったかたが、本当に不良学生だったかも眉唾ですね」
「…………」
ピナとメークが話すが、メークのその言葉にピナがアリエスのほうをうかがうように顔を向ける。さっきのアリエスの説明と、いまの自分の境遇……少なくとも、不良学生の部分は本当だと思っているのだろう。
記事から顔を上げて、シャンディーがメークに行った。
「あれ? でもわたし、こんな新聞見たことないよ? こんなに出てるんなら、お父さんが毎日読んでる新聞にも載ってるはずなのに」
「……お嬢様は当時、ショックでお参りのとき以外は自室に引きこもっていましたし、旦那様や奥様や私達もお嬢様の目につかないようにしていましたから……」
「……そうなんだ……」
二人の会話を聞いていたピナが、改めて記事に目を落とす。文章に視線を走らせながら、独り言のようにつぶやいた。
「その不良学生の名前や写真は……全然分かんないわね。ほら見て」
ピナが三人に記事を見せて、とある箇所を指で示す。そこは印刷上のミスなのか、文字が黒く塗り潰されていた。
「たぶんここにその学生の名前が書かれていたんだろうけど、印刷ミスで黒くなってて分からなくなってる。こっちは誰かがコーヒーでもこぼしたのか、なんかふやけたみたいにぼやけちゃってるし」
「それを言うなら、こっちは閉じたときに偶然ハエでも潰しちゃったみたいですね。なんかひっついてて読めなくなってますから」
ピナとメークの言葉に、シャンディーも見つけた写真を指で差しながら。
「この写真も変だよ。その人の顔写真だと思うけど、なんかピンボケしてて全然分かんなくなってる」
「確かに変ですね。ピンボケしている写真なんて、掲載する段階で気付いて差し替えるはずなのに」
そう言ったシャンディーもメークも、さすがに奇妙だと思い始めたようだ。ここまで見事にピンポイントに、その学生の個人を特定する名前や写真が読み取れなくなっているのだから。
「「…………」」
不思議がる二人に対して、アリエスとピナは無言のままだった。無言のまま、アリエスはそれらの記事を見、ピナはそんなアリエスを見つめていた。




