77 確かめたいこと
アリエス達が話し込んでいる間に、多くの学生達はすでに帰路についていた。無論、学舎や部活棟などに残っている学生もいて、停車場にもちらほらとおしゃべりしている者の姿が見えていた。
高等部学舎の敷地内にいたときは、すれ違う者達はピナの姿を見てヒソヒソと話したり距離を取ったり怖がったりしていた。しかし中等部の敷地内に移ると、彼女を知っている者が減ったのか、そのような態度は少なくなった。
とはいえ、中等部に高等部の学生がいること自体が珍しいので、そういう意味では注目を集めていたが。
そして中等部の停車場に着いたとき、一台の馬車のドアが開いてシャンディーが駆け寄ってきた。
「アリエスお姉さん! 用事終わったんだね!」
彼女はアリエスへと抱きついて、喜んだ顔をする。アリエスと会えたことが本当にうれしいようだった。……が、そばにいるピナに気付くと小首を傾げた。
「……誰? アリエスお姉さんのお友達?」
「ええとね、シャンディー、彼女は……」
アリエスが答えようとしたとき、それより早くピナが悪そうな笑みをしながら言った。
「お友達なんていうたいそうなもんじゃないわ。しいていうなら、そいつが子分であたしが親分ってところね」
「…………」
彼女の言うことをちゃんと理解出来たわけではなかったが、シャンディーはささっとアリエスの後ろに身を隠してしまう。シャンディーは人見知りをするような性格ではないはずだが、ピナの悪そうな笑みを不気味に思ったのだろう。
「あらら。嫌われちゃった」
「そんな顔をすれば当たり前だと思いますけど……。なんでわざわざ……」
「あたしはいまのこの学園の悪役令嬢だからね」
「……まったく……」
アリエスがシャンディーに言う。
「シャンディー、大丈夫ですよ。彼女はこう見えて、素直になれないだけでチワワのように可愛いかたですから」
「そうなの……?」
「はい」
二人の会話に、今度はピナのほうが眉を動かした。
「なにチワワって?」
「知らないんですか? 犬のことですよ」
「そうじゃなくて……まあ、いいや。こんなことしてたら図書館閉まっちゃうし、早く行くわよ」
ピナがシャンディーに目を向ける。シャンディーは一瞬びくりとするが、ピナは構わずに。
「詳しいことは馬車のなかで話すけど、あの馬車でいまからあたし達をこの街の図書館に送ってちょうだい。調べなきゃいけないことがあるの」
「え……?」
初めて会った人物にいきなり言われて、シャンディーはよく分かっていない声を漏らす。そんな彼女にアリエスもまた優しく言った。
「シャンディー、お願い出来ませんか? わたしにもまだよく分かってはいないのですが……ピナさんはなにか確かめたいことがあるようなんです」
「…………、アリエスお姉さんがそう言うなら……」
シャンディーはアリエスのことを心から信頼している。彼女の言うことなら間違いはないだろうと思っているし、頼まれるなら可能な限り聞いてあげたいのだ。
「ありがとうございます、シャンディー」
そんなシャンディーにアリエスは優しい顔でお礼を述べるのだった。




