66 シャンディーとの約束
彼女達の返事を聞いて、ベリーは嬉しそうな声を出した。
「良かったわ。断られたらどうしようかと不安でしたの。さあ、それでは中庭に参りましょうか」
ベリーは教室を出ると、先頭に立って廊下を歩き始める。そのあとを取り巻き達が賛辞の声を上げながら続き、アリエスとシャンディーとシャンディーの友人は最後尾について廊下を進んでいく。
「学園の聖女様と一緒にお昼を食べられるなんて、感激だねシャンディー!」
「う、うん……」
学園の聖女であるベリーと一緒の空間にいられることに、シャンディーの友人は心底からうれしがっているようだった。しかしシャンディーの表情は固く、そっと隣を歩くアリエスのほうに目を向ける。
「…………」
アリエスは真面目な顔でベリーのほうを見ていたが、シャンディーの視線に気付くとにこりと微笑みを返した。
「大丈夫ですよ、シャンディー。わたしは一緒にいますからね」
「……うん」
そう、アリエスはベリーの本性を知っている。彼女は自分の承認欲求を満たすために、他人の弱味につけこんで、利用して、貶める。
この昼食会もまた、編入学したアリエスや高名なシューグ家のシャンディーに自分を良く見せて、あわよくば自身の信者として取り込んだり、シューグ家とのコネクションを強く持とうとするために開催するのだろう。
もし各界の重要人物を動かせるシューグ家と仲良く出来れば、自分もその甘い蜜を吸えると思ったのかもしれない……。
その後……中庭での昼食会はつつがなく進行し、何事もなく終了した。ベリーは終始取り巻き達にちやほやされていて、ときおり思い出したようにアリエスやシャンディーに話しかけていた。
それに対しアリエスは当たり障りのない返答を返し、シャンディーもまた大人しい様子で答えていた。普段のシャンディーを知っている人物が見たら、本当に同一人物かと思ってしまうほどに……あるいはこの大人しさを普段から見せてくれればと思うほどに。
そして昼食会が終わり、午後の授業も流れていき、あっという間に放課後がやってくる。鞄を持って席から立とうとしていたアリエスに、ベリーが声をかけた。
「アリエスさん、もしよろしければ一緒に帰りませんか? 馬車の停車場にうちの送迎馬車がおりますの。自宅までお送りしますよ」
取り巻き達が、いいなあ、羨ましいなあといった声を漏らしている。しかしこれに関しては、アリエスは承諾せずに、頭を下げながら丁寧に断りの言葉を述べた。
「聖女様からのお誘い、誠にありがとうございます。しかし申し訳ありません、帰りはシャンディーと一緒にシューグ家の馬車で帰ると約束しておりますので……」
「そういえば、アリエスさんはシューグ家のメイドでしたわね」
「はい。ですからこればかりは、シャンディーとの約束を守らなければなりませんので……」
取り巻き達も納得したのか、
「シューグ家の方の言いつけなら仕方ないわよねえ」
「メイドも大変なんだなぁ」
「逆に考えるのよ。これで私達にも、今日のベリー様の帰りのお供のチャンスがあることになるわ」
「それだ! ベリー様と一緒に帰るのは俺だ!」
「いえわたしよ!」
口々にそんなことを言っていた。




