63 昼休み
「アリエスさん? どうかしましたか?」
黙ったまま見つめてくるアリエスの様子に、ベリーは小首を傾げて見せる。彼女が予想していた反応とは違っていたようで、不思議に思ったのだろう。
とっさにアリエスは答えた。
「あ、いえ、あまりにもお綺麗なかたでしたから、つい見とれてしまって……」
「まぁ、お上手な方ね」
ベリーは自分の頬に手を当てて照れた仕草を見せる。やはり言われ慣れているのか、その所作にはどこか芝居がかったところがあった。
そのとき学園のチャイムが鳴り響き、ドアから教科担任の教師が入ってきた。
「おー、一時限目の授業を始めるぞー、席に着けー」
その声に生徒達が自席へと戻っていく。ベリーもまた。
「あら、もうそんな時間? それじゃあアリエスさん、また後でお話をしましょうね」
そう言って自分の席……アリエスの隣の席へと座るのだった。
ひとまずアリエスは内心で安堵する。ベリーと面と向かい合ったまま、どんな話をすればいいのか分からなかったから。
とはいえ、授業の間も隣にいるベリーが気になって、あまり授業に集中出来なかったのではあるが。
●
午前の授業が一段落し、昼休み。アリエスが教科書や筆記用具を机にしまっている間に、隣にいるベリーの周りには朝と同じくクラスメイト達が集まっていた。
「ベリー様っ、お昼はわたしと一緒に食べましょう!」
「いいえ、ベリー様は私と食べるのよ!」
「図々しいぞ! ベリー様を独り占めしようとするな!」
「なによ!」
「なんだよ!」
さっきから相変わらずな調子である。ベリーは、
「あらあら、皆さん喧嘩はいけませんよ」
とにこやかに言い、その度に取り巻き達は、はいベリー様! と元気よく答えるのだ。
そしてアリエスはというと、お昼はどこで食べようかと考えていた。鞄にはシューグ家を出る前に渡された弁当が入っている。
『購買や食堂で済ますのもいいけど、アリエスさんにはちゃんと栄養あるものを食べてほしいからね。旦那様達の朝ご飯を作るときに余ったものも入ってるけど、はいこれお弁当』
女性コックにそう言われて渡されたのである。二段になっていて、本当に余り物なのかと思うくらい、またお昼ご飯にしては多いのではとも思うくらい、量があった。
(教室で食べるのもいいけど……ベリーさんやみんながいたら……)
転生前のアリエスのことを覚えている者は、アリエス自身以外では存在しない。だから周りの目を特に気にする必要はないのだが……アリエスはどこか気が引けてしまっていて、みんながいないところで食べたい気分だった。
だから、アリエスはベリーや取り巻き達の邪魔にならないようにそっと立ち上がると、気付かれないように教室を出ていこうとする。しかしそのとき、彼女の様子に気付いてベリーが人垣のなかから声をかけてきた。
「アリエスさん」
「え……?」




