60 学園生活の一日目
アリエスはドアを開けると、前に立つシャンディーに微笑みかけて答えた。
「はい、終わりましたよ。それでは学園に向かいましょうか」
「…………」
学生服姿のアリエスを見たシャンディーは、一瞬ときが止まったように息を飲んで彼女のことを見つめていた。
「シャンディー?」
「……かわいい……」
「え……?」
小さなつぶやきをこぼしたシャンディーは、今度は元気にハイテンションに声を上げる。
「かわいい! かわいいよアリエスお姉さん! ね、メークもそう思うでしょ!」
「そうですね」
「かわいすぎるよアリエスお姉さん!」
そう言ってシャンディーはアリエスへと抱きつき、あまりにも予想していなかった事態にアリエスは驚いてしまうのだった。
そして彼女達は玄関に続く廊下を歩く。シャンディーがうきうきとした様子で前を歩くなか、アリエスの隣に並ぶメークがアリエスに話しかけた。
「それにしても、本当に似合ってるわよアリエスさん。まるで本当にどこかのお嬢様みたい……ってごめん、前はそうだったんだっけ」
「いえ、いいですよ、いまは違うわけですし。とはいえシャンディーの反応にはびっくりしましたけど」
「あーあ、私ももうちょい若ければ学生服着れたのになあ」
「それなら今度着てみませんか? わたしのこれ貸しますから」
「ぶはっ」
メークは思わず吹き出してしまった。手を振って笑いながら。
「勘弁してよ、さすがにもう恥ずかしいって」
「そうですか? メークさんなら似合うと思いますけど」
「お世辞はありがと、でもやっぱり遠慮しとくから、みんなに見られるのも恥ずかしいし」
シャンディーが二人に振り返る。
「なになに、なんの話?」
「何でもありませんお嬢様。それより玄関に着きましたよ」
メークはとっさに話題を逸らしてしまう。もしシャンディーに興味を持たれでもしたら、それこそ面倒なことになると思ったのだろう。
そうして玄関に到着し、シャンディーとアリエスは馬車に乗り込む。馬車にはすでにシューグと執事長がいて、全員が揃ったのを確認した馬車が、ドロナや大勢の使用人の見送りを受けながら出発した。
こうして、アリエスの再びの学園生活の一日目が始まったのである。
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「今日はこのクラスに編入生がやってきました」
教室内で担任教師が話し、生徒達が驚きざわめく声が聞こえてくる。ドアの外の廊下ではアリエスが緊張して待っていたのだが、そんな彼女に教師が言った。
「ユースさん、入ってきてください」
「はい」




