57 編入学
やれやれとドロナが口を開く。
「誤解のないように。あくまで学生がメインで、メイドとしてはそうする必要がある場合です。せっかく学園に通うのに、それでは気疲れしてしまうでしょう」
それからドロナがアリエスに目を向けて。
「しかし、ジージョが言ったこともその通りです。アリエスさんには、私達には出来ない、学園でのシャンディーの様子を見守ってほしいのです。この子はそそっかしいところがありますからね」
「もぉー、いつまでも子供扱いしないでよ」
「残念ながら貴方はまだ子供です。ちゃんとしたレディになりたいのなら、少しはアリエスさんを見習いなさい」
「むぅー」
シャンディーは頬を膨らませる。しかしそれもすぐに収まり、改めてアリエスへとうれしそうな顔を向けた。
「通おうよ、アリエスお姉さん! お金だってお父さん達が払ってくれるんだからさ!」
「おいおい……」
「え、違うの?」
「いや違わんが……。そういうのは大きな声で言うもんじゃないだろう?」
「大人ってめんどーくさいー。とにかくアリエスお姉さん、一緒に学園に行こう!」
シャンディーや彼らの言葉に、アリエスはしばし返答出来ずにいた。うれしくないわけではない、むしろ正直に言えばすごいうれしかった。自分のためにみんながここまでしてくれるのだから、うれしくないわけがない。
しかし即答出来なかったのは、ある種の思いが脳裏によぎったからだった。
(もしかして、これも女神様の力なの……?)
探していた仕事がすぐに決まり、学園にも再び通えるようになる……あまりにも偶然が過ぎる出来事だった。記憶や記録を修正出来る女神のことなのだ、こんなことくらいわけもなく出来るだろう。
もしこれが女神の力なのならば、たとえいまアリエスが拒否したとしても、いずれは結局学園に行くことになるのだろう。アリエスにはそんな予感がしていた。
どうせ避けられぬことならば、むしろうれしいことならば、受け入れたほうがいい……彼女はそう思った。そしてお礼の言葉を述べながら頭を下げる。
「ありがとうございます。ぜひ、カデミア学園に編入学させていただきます。皆様のご恩に報いられるよう、勉学とシャンディーの見守りに励んでいく所存です」
頭を上げるアリエスに、シャンディーは席から立って抱きついた。
「わーい! これからは学園でも一緒だね!」
「ふふ、そうね」
アリエスが微笑み、シャンディーが笑顔を浮かべ、食堂にいる皆が暖かな表情をする。
こうして、アリエスの学園への編入学が決まったのだった。
……唯一、アリエスに懸念することがあったとすれば……。
(ベリーさん……彼女も同じ学園に通っている……)
果たして、それが今後どう影響してくるのか……。アリエスはそれが心配だった。
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