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【完結】 学園の聖女様はわたしを悪役令嬢にしたいようです  作者: ナロー


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54 なくてはならない


 アリエスはシューグ家に雇われているメイドにすぎない。たとえシャンディーの命の恩人だとしても、それとこれとは別の事柄である。ドロナが一声言えば、アリエスの処遇などどうにでも出来るのだ。

 アリエスは一瞬たじろいでしまう。高名で莫大な資産を持つシューグ家を敵に回すということは、すなわちただの一般人にすぎないアリエスにとっては人生が破滅することと同義に等しい。


 自己の身を守るためには、社会的に抹殺されないようにするためには、ドロナの言うことを聞くしかない。シューグ家の怒りを買ってはいけない。いま目の前の絨毯に額をつけている者を見捨てなければいけない。

 ……そんなことは、アリエスには出来なかった。なぜ同じく被害者であるはずの者が、加害者の代わりに裁かれなければならないのか。


 アリエスにはそれが許容出来なかった。そんなことを許容してはいけないと思った。裁かれるべきは絵を偽造した者達である……アリエスは自分が信じる正義を貫く覚悟を持った。

 たとえそれがドロナやシューグ家の怒りを買うことになるとしても。


「……分かりました。わたしがタル様の処罰の一部を肩代わりすることが、それがわたしの処罰の権利だというのなら、それによってタル様の処罰が軽くなるのなら……わたしを処罰してください」

「…………っ」


 アリエスが宣言したその瞬間、ドロナの強い意志の宿っていた目が開かれた。彼女だけではなく、画商もとっさに驚きに彩られた顔を上げ、メイド長も目を開き、コレートはひゅうと口笛を吹いた。


「そんな⁉ メイドさんにまで迷惑をかけるわけには……っ」


 慌てた画商が言い終わるよりも先に、顔はアリエスへと向けたまま、ドロナが片手のひらを画商へと伸ばしてその声を制止する。ドロナがアリエスに言った。


「まさかついさっき会ったばかりの人間のためにそこまで言うとは。どうやら私は貴方のことを見誤っていたようです。まさかここまでとは」

「……ドロナ様の仰りたいことは分かります。見ず知らずの人のためにそこまでするなんて馬鹿だとお思いなのでしょう。しかしわたしは、わたしが正しいと思ったことをしたいのです」


 もう二度と後悔しないために。転生後の、二度目の人生まで後悔して、手遅れの事態を引き起こさせないために。

 アリエスのそんな意志を聞いたドロナは、しかしそれに反するように言った。


「貴方の気持ちは分かりました。私は貴方を馬鹿だと思ったわけではありません。しかし、さっきはああ言いましたが、やはり貴方にその画商の処罰の一部を肩代わりさせるわけにはいきません。貴方は我がシューグ家にとってなくてはならない方だからです」

「……っ。なにを……っ」


 声を上げようとしたアリエスの肩に、メイド長が手を置いて制止する。


「そこまでですアリエスさん。それ以上はやめておきなさい。無駄な言い争いですから」

「なにを、メイド長……っ⁉」


 ……シューグ家に仕えるから、メイド長までそんなことを言うの……っ。アリエスがそう思ったとき、メイド長がドロナに顔を向けて進言した。


「お言葉ですが、奥様、お早めにお考えになっていることを仰ったほうがよろしいかと。これ以上話がややこしくなる前に」

「ややこしい? どこがですか?」

「そこがです。とにかくお早く。タル様もお待ちですから」

「……? ええ、そうね、とにかく早く伝えましょう。手遅れになる前に」


 ドロナが改めて画商に向き、ごくりと喉を動かす画商に、そして言った。


「タルさん、貴方に命じます。この絵の偽造品を作った者を調べ、見つけ出し、その情報を官憲へと伝えなさい。もう二度とこのような事態を起こさないように、これ以上の被害者を出さないために」

「「……え……?」」


 思わず声を漏らす画商とアリエス。締めくくるようにドロナは言葉を紡ぐ。


「それがわたしから貴方に課す処罰です。分かりましたね?」

「「…………」」


 画商とアリエスはぽかんとしてしまった。一瞬、聞き間違えたかと思ってしまった。メイド長はやれやれといった感じで小さく息をつき、そしてコレート夫人はというと。


「あっはっはっはっはっ……!」


 と腹を抱えてテーブルをばんばんと叩きながら爆笑していた。あまりに笑いすぎて目尻に涙が浮かんでいるほどだった。



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