51 信じてみたいと
画商は驚きの顔をする。にわかには信じたくないことではあるが、しかし自分でもおかしなところがあると言い、思ったことも確かだ。
ならば、確認する方法は……実際にこの絵を額縁から取り外してみればいい。だが……。
「額縁を取り外してみれば、メイドさんの言ったことが本当か、判別することは可能です。しかし、それは、もし私や彼女の疑念が間違っていた場合、せっかくのレプリカの価値を下げてしまうかも……」
本当にレプリカならば、画家が存命だったときに製作されたものであり、たとえ額縁といえど修復には費用や手間や時間がかかる。その間に絵に傷や汚れがつけば、価値は下がってしまうだろう。
先ほど画商も言っていたように、レプリカとはいえそれなりに価値があるものなので、もし彼らの推測が間違っていれば、画商にとっては大きな損害になってしまう。その危惧があるため、確証がないうちは思いきったことが出来ないでいるのだ。
「……額縁を取り外すのには、時間がかかるのですか?」
どうしようか悩んでいる画商に、ドロナが声をかけた。え……? と画商がドロナを見、アリエスや夫人やメイド長も彼女に顔を向ける。
「額縁を取り外して見てみれば、全て分かるのでしょう?」
「それは、そうですが……しかし、もし本当にレプリカだった場合は……」
「ならば、額縁を取り外してください。私はアリエスさんの仰っていることを信じてみたいと思います」
「……!」
画商が驚き、また彼だけでなくアリエスもびっくりしてしまった。彼女は少し慌てたようにドロナに言う。
「ど、ドロナ様、わたしも自分で言っておいてあれですが、もしかしたらわたしの推測のほうが間違っている可能性も充分あるわけでして……っ」
「そのときはそのときです。額縁を取り外してしまったこの絵を買い取れば済む話でしょう。それだけではアリエスさんの気が咎めるなら、今後のお給料から絵の修復費用を少しずつ差し引かせてもらいますが。それなら構わないでしょう?」
「……っ」
アリエスへと振り向いたドロナが冷静に言い、そして彼女へとウィンクする。ドロナは言ったことは実行するタイプの人間なのだろうが、しかしこの場合においては、アリエスの推測のほうが正しいと確信しているらしい。
ドロナが画商のほうを向く。
「貴方も、それなら構わないでしょう? 少なくともそれがレプリカなら、貴方の不利益にはならないはずです。偽造品の場合は別ですが」
「……それは……」




