表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】 学園の聖女様はわたしを悪役令嬢にしたいようです  作者: ナロー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/120

50 極薄のガラス板


 言われて、画商は絵の隅に書かれているサインに目を向ける。何の変哲もない画家のサインだ。

 当然ながら筆記体であり、その筆跡は本物や他のレプリカに書かれているサインと同一のものである。画商が以前本物を見た際の画家のサインと同じものが、そこには書かれている。


「……む……むむ……?」


 画商は持っていた絵を顔に近付けて、食い入るようにサインに見入った。ドロナやコレートやメイド長は、いったい何が起きているのか分かっていない様子で、画商のことを見ている。


「……これは……このサインは……綺麗すぎる……?」

「どういうことですか?」


 つぶやいた画商に、ドロナが説明を求めるように尋ねた。画商は顔を上げると、ちらちらと絵のサインに視線を落としながら言う。


「たとえレプリカといえど、サイン自体は画家が書くことになっているのです。いわゆる直筆のサインですね。このレプリカは複製品ではあるけれど、きちんと作者自らが許可して製作したことを証明するために」


 それがレプリカと贋作の違いの一つでもある。


「もちろん例外はあります。作者の死後に遺族や子孫の許可を取って製作された場合ですね。その場合は遺族や子孫のサインや、あるいは正式なレプリカであることを示す証明書が添付されたりするのですが」


 夫人が口を開いた。


「まどろっこしいことはいいから、どういうことか教えてくださらない? そのサインがどうかしましたの?」

「あまりにも綺麗すぎるのです」

「綺麗すぎる?」


 サインが綺麗なことの何が悪いのか? ドロナが言った。


「それは良いことなのではないですか?」

「言葉が足りませんでしたね。先ほども言ったように、直筆のサインは絵に直接書かれます。そのため、ペンのインクがわずかににじんで、同一作者のサインでも若干の違いが出てきたりするのです」

「それが……?」


 だからどうしたというのか? 説明されたものの、ドロナもコレートもメイド長もいまだによく分かっていないようだった。

 ただ一人、アリエスだけは真面目な顔で画商に言葉をかける。


「あくまでわたしの推測ですが、その額縁の絵とガラスの間に、もう一枚極薄のガラス板が挟まっているのではないでしょうか?」

「なんですって?」


 画商がアリエスのほうを見る。彼女は続けた。


「おそらくはそのガラス板に、精巧に模倣したサインが印刷されているのだと思います。それで、コンパスなどで適当に描いた『白の球形』の絵の上に、そのサインのガラス板を重ねて、あたかもレプリカのように偽造しているのかと思われます」

「……まさか……そんな……」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ