42 来客の男女
「アリエスさんは他のゴミをまとめといて」
「はい」
メークが使う魔法具は小さな球体と、それにつながる長細いホースから出来ており、ホースの先端で吸い取ったゴミやほこりが球体に溜まっていくというものだった。
その魔法具でメークが絨毯の掃除をし、アリエスがゴミ箱のゴミや灰皿の吸い殻などを一つの大きなゴミ袋にまとめていると、応接間のドアがノックされた。
「はい、ただいまメークとアリエスが掃除していますが」
気付いたメークが答えると、ドアを開けてドロナが言ってくる。
「いまお客様がいらしたので応接間をつかいたいのですけど、大丈夫ですか?」
メークはさっと室内とアリエスの様子を見回す。室内に汚れやほこりは見当たらず、アリエスもゴミをまとめ終えたところだった。
「まだテーブルや棚の水拭きが終わっていませんが、それ以外は終わっています」
「ほこりは取っているのですね?」
「はい」
ドロナもまた自分の目で室内を見回して、ほこりや汚れがないことを確認する。
「それなら、水拭きは後回しにしても良いでしょう。私は玄関に待たせているお客様をお連れしてきますので、アリエスは紅茶とお菓子の用意を、メークはゴミ出しをお願いします」
「かしこまりました」
ドロナが玄関へと向かい、メークがアリエスに近付いて。
「まとめたゴミ、ちょうだい。これで吸い取ったゴミもまとめて捨てておくから」
「分かりました」
「紅茶とお菓子はキッチンに行けばもらえるから。それと、たぶんメイド長か執事長も一緒だと思うけど、お客様に失礼のないようにね」
アリエスはごくりとする。
「……分かりました」
「まあ、そんなに緊張しなくても大丈夫な相手だとは思うけどね」
メークがアリエスの肩をぽんぽんと叩いて、二人は応接間を出るとそれぞれ言われたことをしに向かう。キッチンから紅茶とお菓子を受け取って、アリエスは応接間に戻りドアをノックする。
「はい」
「アリエスです。紅茶とお菓子をお持ち致しました」
「ありがとうございます。どうぞ入ってください」
「失礼致します」
アリエスがドアを開けると、ドロナと来客の男女が応接テーブルを挟んでソファに座り、ドロナの後ろにメイド長が控えていた。
アリエスは静かにドアを閉めると、応接テーブルへと近付いていく。来客の男女のうち、女性のほうには見覚えがあった。転生前の社交パーティーで二言三言話したことのある、貴族の夫人だった。
その夫人の夫のことも知っている。最後に会ってから離婚していれば別だろうが、同席している男性は夫ではなかった。
またその男性は下座に座っていて、夫人が上座に座っていた。これらのことから、おそらく男性は夫人の付き添いで来た、夫人の知り合いかもしれないと判断した。




