41 応接間
そうやってアリエスは屋敷での仕事をこなしていく。ちなみに屋敷に残ったドロナは屋敷に届く手紙や書類や事務などの処理をしたり、裁縫や屋敷内の点検をしたり、手があいたときには使用人達の家事の手伝いもしたりしていた。
「珍しいですよね。貴族の奥様が屋敷の事務処理や点検や家事の手伝いをするなんて」
「ドロナ様のこと?」
広大な庭で洗濯物を干しながら、アリエスとメークは会話をする。
「わたしの知っている貴族の奥様は、屋敷のことは使用人に任せて、読書や他の貴族の奥様達とお茶会をしたり趣味をしたりしていましたから」
「あー、まー、貴族としては珍しいかもしれないよね。自分で屋敷のことをするなんてさ」
アリエスの母親も、アリエスの父親の事業が傾くまでは屋敷のことは使用人に任せていた。事業が傾いてしまい使用人を減らさなければならなくなったあとは、アリエス同様、自身でも家事をするようになっていたが。
ファサリ、洗いたての服を広げながらメークは答える。
「それもやっぱり、元々一般の方だったからかもしれないね。貴族になる前から家事をやっていたから、いまもそれをやるのが習慣になっちゃってるってやつ」
「……なるほど、確かにそうかもしれませんね」
話していた二人に、同じく洗濯干しをしていたメイド長が声をかける。
「メークさん、アリエスさん、手も動かしてくださいね。あと、これが終わったら応接間の掃除をお願いしますよ」
「はーい」
メークは返事をすると、アリエスにひそひそ声で言う。
「……メイド長って地獄耳なんだよね」
「……あはは……」
苦笑するしかないアリエス。メイド長はぎろりと二人を見て。
「聞こえてますからねメークさん」
「すいませんっしたー」
背を伸ばしてメークは言い、アリエスに振り返ると舌先をぺろっと出すのだった。
そして洗濯干しが終わり、二人は掃除用具を手に応接間へと向かう。
「応接間にはめっちゃ高い壺とか絵とかあるから、くれぐれも壊さないようにね」
「分かりました」
「もし壊しちゃったら……一生ただ働きすることになるから」
「それは……恐ろしいですね」
「まあ、シューグ様達なら、本当にただ働きにはしないかもだけど。ただし弁償額に達するまでは給料をカットするだろうね」
「それでも処罰としては軽いほうだと思いますけど……」
「まーね。っと、到着。んじゃ掃除するよ」
「はい」
応接間はそれなりに広かったが、二人で手分けして掃除すればなんとかなりそうだった。まずははたきや乾拭きでテーブルや棚などのほこりを取っていき、それからメークが魔法具による中型の掃除用具で絨毯のほこりやゴミを吸い取っていく。




