39 まるでギルドの凄腕冒険者みたい
ドロナがメイド長とメークに声をかける。
「ありがとうございます、ジージョ、メーク。さすがですね」
「「お褒めにあずかり光栄です」」
お辞儀をする二人。シューグもうんうんとうなずいている。ドロナは次にシャンディーを見て、今度は注意した。
「だから注意したでしょう。最後まで気を抜かないように」
「……ごめんなさい……」
ドロナは小さな息をついて。
「席に戻りなさい。朝食を始めますよ」
「……はーい……」
シャンディーが席に戻り、メイドや執事達が所定の位置に控え、そしていただきますをして朝食が始まった。カチャカチャという小さな音がするなか、アリエスがメークに小さな声で話しかける。
「……すごいですね、さっきの。まるでギルドの凄腕冒険者みたいでした」
「……言いすぎです。メイド長も私もただのメイドですから」
メイド長が二人に目を向ける。小さな声だったのだが、聞こえたのだろうか。メークが言う。
「……おしゃべりはここまでです。仕事に集中しますよ」
「……はい」
その後は特に何事もなく朝食の時間がすぎていった。やがて朝食が終わり、シューグ家族の直属のメイドや執事以外が食器の片付けをするなか、シャンディー達は食後の歯磨きなどの身支度をしにダイニングを出ていく。
「アリエスさん、私達もシャンディー様達とともに行きますよ」
「はい。直属メイドだからですね」
「そうです」
シューグ家族直属の使用人は、アリエスを含めて四人いる。シューグに仕える執事長とドロナのメイド長、そしてシャンディーのメークとアリエスだ。
本来はシャンディーの直属も一人にするべきなのだろうが、彼女は朝寝坊の常習犯なため、着替えや身支度の世話として二人仕えるようになっていた。
「……そういえば、わたしの前のシャンディーの直属メイドって誰だったのですか?」
シューグ達のあとに続いて洗面所へ向かう道すがら、アリエスは気になったことをメークに小声で尋ねる。もし自分が直属になったせいで、元々のその役割の人物に迷惑がかかったのではないかと心配したのだ。
「……カレンさんというかたです。ほら、昨日シャンディー様も仰っていたかたですよ」
「……カレンさん……」
アリエスは思い出した。確か、故郷の両親に身を固めてほしいと言われて実家に戻った人とのことだった。
「……アリエスさんも身をもって体験しましたが、シャンディー様の直属は、それはもう大変ですからね。カレンさんが辞めたあと、しばらくは後継を申し出る者がいなくて、私以外の二人目は交代で担当していたんです」
メークの言葉には実感を伴った大変さが込められていた。朝、廊下を駆け走ったときにみんなが応援の言葉をかけてきた意味が分かった気がした。




