38 本当にメイドかと
ドロナとシャンディーが会話をしているうちに、キッチンに続くドアから女性コックが姿を見せる。彼女は料理の載った台車を押しながら。
「料理が出来ました。配膳お願いします」
彼女の呼びかけに応じて、ダイニングにいたメイドや執事達が台車へと向かう。メークやアリエスも向かい、台車から料理の皿を取りながら。
「アリエスさん、その料理は……」
メークが料理を置く場所を教え、
「分かりました」
了承したアリエスが皆とともに並べていく。それを見ていたシャンディーが、おもむろに席から立ちながら。
「わたしも手伝うよっ。アリエスお姉さんだってやっているんだもの」
彼女の言葉に、ドロナが注意する。
「手伝うのは構いませんが、うっかり落とさないように。このあと学園なんですから、制服を汚したら大変ですよ」
「大丈夫だよ。昨日だって手伝ったでしょ」
「昨日は休日でしたから」
シャンディーが台車へ向かい、メイドや執事達に混じって料理を並べ始める。その光景自体は昨日と同じだったのだが、もうすぐ料理を並べ終わるというときに。
「あとはこれだけ」
シャンディーが残った皿を取る。最後の皿で気が緩んだのか、もしくは逆に終わりだからとはりきったのか、運んでいる途中で彼女は何もないところでつまずいてしまった。
『あっ』
シャンディーやアリエス、および数人の若いメイドや執事が声を漏らす。しかしその瞬間、メイド長が動いた。
「メークさん」
「はい」
機敏な動きを見せて、メイド長が中空に放られた皿を料理が落ちないように受け止めて、転びそうになっていたシャンディーの身体をメークが支えて再び元の体勢に戻していく。
『おぉ』
二人の活躍に、思わずといったようにシューグを始め、若いメイドや執事達やシャンディーやアリエスが感嘆の声を漏らす。彼らのなかには小さな拍手をする者すらいた。
「やれやれ、気を付けてくださいね、お嬢様」
「ごめんなさい、ジージョさん」
「何はともあれ、大事にならなくて良かったです。メークさんもありがとうございます」
メークが軽くお辞儀する。
「こちらこそ、ありがとうございます。さすがメイド長です」
「褒めても何も出ませんよ」
さっきと変わらず落ち着いた様子で会話を交わす二人を見て、アリエスはすごいと思っていた。シャンディーがつまずいた瞬間、アリエスはそれを視認することは出来ていたが、瞬時に行動に移ることは出来なかった。
もしくは、何かトラブルが起きたときのために気を張っていたのだろうが。だとしても二人のあの機敏な動きは、本当にメイドかと思ってしまうほどだった。




