37 大好きで憧れの存在で恩人でもある
「おはよー、お父さん、お母さん」
シャンディーが挨拶を返して、ドロナの向かい側の席に座る。アリエスはメークとともにシャンディーのそばに控えていたのだが、シャンディーはそんなアリエスへと。
「あれ? アリエスお姉さんは座らないの?」
自分の隣の席に手を置きながら聞いてくる。アリエスは苦笑にも似た顔をしながら。
「いまのわたしは見習いメイドでございますから」
「えーっ、わたしは気にしないよ、そんなの」
だから一緒に朝ご飯食べよう……そう言いたげなシャンディーに、ドロナが注意するように言った。
「シャンディー、聞き分けなさい。アリエスさんには仕事があるのですから」
「それってわたしの言うことを聞くんでしょ。じゃあ一緒にご飯食べてもいいじゃん」
「それはただのわがままです」
「ぶーぶー」
口を尖らせるシャンディーだが、ドロナは完全に無視してメークとアリエスのほうを向いた。
「メーク、アリエス、おつかれさまでした。大変だったでしょう」
「もったいなきお言葉でございます」
代表するようにメークが答えて、手を前で組みながらお辞儀をする。アリエスも続けてお辞儀をして……ドロナは、
「……ふぅ……」
と小さな息をついた。
メークはお辞儀とお礼の言葉は述べたが、否定をしたわけではない。つまりシャンディーはいつも通り寝坊をしていて、自分達が急いで身支度を整えたのだと暗に伝えたのである。
そのことをドロナも理解したから嘆息して、シャンディーへと向き直る。
「シャンディー、ちゃんと朝は自分で起きて身支度を整えるように言っているでしょう。初等部のときから直すように言っているのに」
「起きれないんだから仕方ないじゃん」
「起きれるように努力するのです。今日からはアリエスさんも、見習いメイドとしてシャンディーのお世話係になったのですから」
「う……」
そこでシャンディーは口ごもってしまった。大好きで憧れの存在で恩人でもあるアリエスの名前を出されて、さすがに口答えが出来なくなってしまったのだろう。
またアリエスに寝ぼけた姿を見られて、実際に恥ずかしいとも思っているのかもしれない。
「はいはい分かりましたよーっ。明日から気を付ければいいんでしょーっ」
「はいは一回で。本当に気を付けて早起きしてくれればいいんですけど」
「分ーかったってばぁ。もうこの話はいいでしょぉ」
「はあ、やれやれ……」
ドロナは再び嘆息する。おそらく毎日のように注意してきて、いままで守られたことがなかったのだろう。




