35 洗面所
「いますねアリエスさん⁉」
「は、はい……っ」
息を切らしながらも答えるアリエスにメークは。
「よしっ、それじゃあ荷物を置いて、さっきみたいにお嬢様が倒れないように支えていてください!」
メークが広くて豪華な洗面所のなかにシャンディーを立たせて、交代するようにアリエスが身体を支える。メークは洗面所に綺麗に畳んで置かれていたフェイスタオルを手に取ると、それを水で濡らしてしっかりと絞っていく。
「お嬢様、少し冷たいですけど我慢してくださいね!」
そう言ってメークが濡れタオルをシャンディーの顔に当てて、手際よく動かして綺麗にしていく。
「ひゅ、ひゅひぇひゃひひょ!」
「我慢です、いつもしてるでしょう!」
……やっぱりいつもしてるのか……。
アリエスが思うなか、冷たい濡れタオルのおかげなのか、ようやくそこでシャンディーは夢の世界から覚めたようだった。
「あれ、洗面所にいる⁉ 服もパジャマじゃない!」
……まさか気付いてなかったのか……。
「私とアリエスさんで身支度はすでに済ませてあります。それでは寝起きの歯磨きをして朝食を食べたら、また歯磨きをしますよ」
「え、ちょっといつもより情報量が多い! アリエスお姉さんもわたしの着替えしちゃったの⁉ というか寝ぼけてるところ見られちゃってた⁉」
「起こしに行ったときに言ったでしょう。お嬢様がお起きにならなかったので、仕方なくです」
「そんな恥ずかしいよぉ~」
両手で顔を覆うシャンディー。メークは淡々と歯ブラシを濡らして歯磨き粉をつけていた。
「そんなことより、はい、寝起きの歯磨きをお願いします。それともいつも通り私がしましょうか?」
「……自分でする……」
「これは珍しい」
メークから歯ブラシを受け取ったシャンディーが、洗面所の鏡に向かいながら歯を磨いていく。メークがアリエスに耳打ちした。
「今日はアリエスさんがいるから自分で歯磨きをするようです」
「はは……」
声だけで苦笑いを表現しておく。がらがらぺっ、と歯磨きを終えたシャンディーが二人に向いた。
「歯磨き終わったよ~」
「ではダイニングに向かいましょう。旦那様と奥様がお待ちですよ」
「うん~」
シャンディーの荷物を持って、ダイニングまでの廊下を先導するようにメークが歩き、その少しあとをシャンディーとアリエスが並んで歩く。
「アリエスお姉さんもわたしのお世話係になったんだねー」
「はい。これからよろしくお願いします、シャンディー」
「うん、よろしくー」




