34 きききーっ
「よし、もういいですよ、お嬢様を下ろしてください!」
「はい……っ」
アリエスがシャンディーの足を床につけて、メークがスカートを履かせていく。ずれないように腰の位置でちゃんと固定してから、今度はパジャマの下をささっと脱がせ始めた。
「アリエスさん、もう一度お嬢様を持ち上げてください!」
「はい……っ」
アリエスが持ち上げて、メークがパジャマの下を取り去っていく。わずか数分のうちに、いまだ夢現のシャンディーは見事に学園の制服へと着替え終わっていた。
「よし、制服終了! アリエスさん、お嬢様をベッドに座らせてください、倒れてしまわないように注意して!」
「は、はいっ」
アリエスがシャンディーをベッドに座らせて、その間にメークが靴下や櫛などを用意する。メークはまずシャンディーの足元に屈むと、素早くその華奢な足に靴下を履かせていく。
「靴下完了! アリエスさん、お嬢様を支えたまま前側に移動してください!」
「はい……っ」
アリエスと場所を交代する形でメークがシャンディーの背後へと回り込み、さささっと寝癖のついた髪を櫛でとかして、長い金髪をハーフアップにまとめていく。そばで見ているアリエスがすごいと思うほど、彼女は手際よくシャンディーの身支度を整えていっていた。
「ヘアメイク完了! アリエスさん、そこにお嬢様の学生鞄がありますのでそれを持ってきてください! スリッパも忘れずに!」
「は、はいっ」
メークがシャンディーの身体を抱え上げる……いわゆるお姫様抱っこの格好だが、アリエスが荷物を持ったのを確認すると。
「アリエスさん、ついてきてください! 絶対にはぐれないように!」
アリエスが返事をする間もなく、メークは開けっぱなしにしていたドアへと駆け出していく。急いでアリエスも彼女達のあとを追いかけていく。
シャンディーを抱えているというのにメークの足は速かった。まるでイダテンのようであり、シャンディーより軽い荷物を持っているはずのアリエスのほうがついていくのがやっとだった。
長い廊下ですれ違う他のメイドや執事が苦笑いを浮かべていたり、ときには、
「頑張れー、メークさん、アリエスさーん」
などと励ます声をかけてくる。驚いた顔をしていなく慣れているあたり、これが平日朝の日常茶飯事なのかもしれない。
というより、二人が走りやすいように廊下の真ん中には誰も物もいなかった。まるで聖人が海を割っているように、メイドや執事達は廊下の端にいた。
きききーっ、というブレーキ音や埃煙が舞うようなイメージで、メークが洗面所へと到着する。




