29 独特の空気感や雰囲気
「二年生ですか、ということは、シャンディーとは三歳違いということになりますね」
「そうですね……」
「ちなみに私は大学部の十六年生になります……冗談です。本当は永遠の十七歳ですよ」
「…………」
冗談と事実が逆になっている気がしたが、それは触れてはいけないことかもしれないとアリエスは思った。だから、この話題をとりあえず切り上げて、彼女は別の話題を持ち出す。
「そ、そういえば、さっきのかたがた、ドロナさんやシャンディーさんのことを存じなかったみたいですよね。高名なシューグ家のかたなのに」
「……まあ、私達は社交パーティーにほとんど出席しませんからね。主人がそういうのが苦手な人ですし、私もあまり乗り気ではありませんから。シャンディーも遊べなくてつまらないと言いますし」
「はあ……」
社交パーティーなのだから、子供のように遊べないのは仕方のないことだろう。シャンディーと同年代の子供も訪れるだろうが、貴族としてのしつけがされていて、大人顔負けの落ち着きぶりや態度で過ごすはずだ。
「シューグさんもドロナさんも、元は一般のかただと仰っていましたが……そうだから……ですか?」
「それが大きいかもしれませんね。いまはアリエスさんしかいませんから、語弊を恐れずに言いますが、私はどうもあの空気が苦手でして」
「…………」
貴族の社交パーティーにおける独特の空気感や雰囲気……それはアリエスもまた感じていることではあった。無論、全ての貴族や社交パーティーがそうであるわけではない、なかにはシューグ家のような者達もいるだろう。
しかし……。
「貴族の一家名となったからには、そういうものにもちゃんと出席したほうが良いのでしょうけど……とりあえずシャンディーがもう少し大きくなってからですね。あの子の成長に悪影響があっては困りますから」
「……そうですか……」
「とはいえ、シャンディー自体は気にしないかもしれませんが。通っている学園も、貴族家の名門や実業家の一族が多いカデミア学園の中等部ですし」
「え……?」
「あの子が通ってみたいと言いましたので……主人や私は一般の学園のほうが良いのではと言ったのですが。……心配ですか?」
「そ、その……」
言葉は濁したが、アリエスはかすかに首をうなずかせた。自分が通っていた学園……そして悪役令嬢を強いられた学園。
シャンディーに何かしらの悪影響があってはどうしようという心配が、少なからず出てきてしまうのだ。




