25 取り巻き
「あいたた……」
「大丈夫ですか、お嬢さん?」
痛がる声を漏らすシャンディーへと、ぶつかってしまった相手が手を差し伸ばしてくる。ドロナとアリエスはシャンディーの元へと駆け寄っていこうとしていたのだが、その相手に気付いたアリエスは内心で驚いてしまった。
(ベリーさん……⁉)
その相手は、転生前の学園で聖女として慕われていて、そしてアリエスを悪役令嬢に仕立て上げたベリー、その本人だった。
「ご、ごめんなさい……ありがとうございます……」
ベリーの手を取って、シャンディーが立ち上がる。シャンディーの元へと到着したドロナも頭を下げていた。
「申し訳ございません、私の娘が失礼をしてしまい……」
そんなドロナとシャンディーに、ベリーの周りにいた取り巻きが声を上げる。怒りの感情を隠しもしない、文句の声だった。
「おい! この方を誰だか知っているのか! カデミア学園の聖女様だぞ! 怪我でもしたらどうするんだ!」
「そうよそうよ! 服だって汚れたらどうするつもり! 弁償してくれるんでしょうね!」
それらの怒声にシャンディーはうつむき、ドロナはひたすら謝るばかりだった。
「本当に申し訳ございません。もしお怪我や服が汚れてしまったのなら、治療費や弁償費用をお払い致しますので……」
「慰謝料もだろ! ベリー様の貴重なお時間を取らせたのだから!」「そうよ! その小汚い手に触れたせいで、ベリー様の神聖で綺麗な手が汚れてしまったのだから!」
シャンディーがはっとした顔を上げる。はっとしたのはアリエスも同様であり、さすがに言いすぎだと、彼女は一歩彼らに近付いて文句を言おうと口を開きかけたとき。
「待ちなさい、アリエスさん」
ドロナが彼女を制止する。言葉だけでなく、彼女の手を取って、その歩みを止めようとする。
「ですけど……」
振り向くアリエスに、ドロナは強い目を向けるのだ。
「娘がぶつかってしまったのは事実です。怪我や汚れも、実際にそうなのであれば、誠実に対応しなければならないのは確かです」
「ですが……」
「どうか、ここは私に免じて、その歩みを止めてください。お願いします」
「…………」
もしここでアリエスが声を上げれば、事態はさらに悪化するかもしれない。文句を言う彼らの怒りを増進させて、ドロナやシャンディーをさらに追い詰めさせてしまうかもしれない。
(わたしだけならまだしも……二人を追い詰めさせるわけにはいかない……っ)
アリエスはぐっと堪えた。二人をこれ以上不利にさせないために、ぐっと堪えるしかなかった。




