24 買い出し
シューグ家のメイドとして働くことが決まった日、とりあえずその日は自宅から必要なものを取ってきたり、店で必要なものを買ったりした。といっても、転生したばかりで自宅には物はほとんどないので後回しにして、店での買い出しも、
「メイド服などの仕事に関わるものはこちらで用意しますし、歯ブラシなどの日用品も住み込みで働く以上用意しますし……メイドの仕事も他のメイド達が教えますのでメイド職に関する本も特には必要ありませんよ」
付き添いに来たドロナにそう言われてしまった。
「となると、買い出しに来た意味がありませんね……この時間で、すぐにでも働け始めましたのに……」
「いえいえ、いま必要なものが揃っているのなら、今後必要になると思われるものを買っておくのですよ」
「今後……?」
「ええ。たとえば様々な資格や技能に関する本です。暇な時間に勉強して、出来ることを少しずつでも増やしていくのですよ」
「なるほど……」
街なかにある商店街を歩きながら二人は話している。シャンディーも一緒にいたが、彼女は少し先を行って、店先のガラス越しに商品を眺めていた。
「魔法の才能があるのなら、魔法に関する本を買うのも一考ですよ。独学での習得は難しいですが、もし出来れば普通の資格や技能よりも便利ですし」
「そう……ですね……」
魔法という言葉を聞いて、アリエスは学園にいたころを思い出す。アリエスの魔法の才は普通であり、これといって苦手なことがない代わりに特別得意なこともない、成績も平々凡々だった。
それ自体は気にしていないのだが……魔法、学園生活と思い出して、次に連想したのは、『彼女』のことであった。
はたして、『彼女』はいまもあの学園で『聖女』の仮面を被っているのだろうか? もしかして自分がいなくなったあとに、別の誰かを悪役に仕立て上げているのだろうか? ……と。
「お母さーん、このお菓子買ってー」
アリエスがそんなことを思っていると、道の向こうでシャンディーが声を上げていた。幼い子供のような彼女を道行く人達が顔を向け、ドロナがやれやれと息をつく。
「我慢しなさい。ディナーが食べられなくなりますよ」
「お母さんのけちー」
文句を言ったシャンディーが道の向こうへと駆けていこうとする。しかし前をちゃんと向いていなかったのか、彼女は向こうから歩いてきていた数人のグループの一人にぶつかってしまった。
「きゃっ」
「「あ……っ」」
シャンディー、およびドロナとアリエスがそれぞれ声を漏らす。シャンディーは地面に尻餅をついてしまった。




