23 見習いメイド
ドロナがアリエスに尋ねる。
「新しい仕事は見つかったのですか?」
「いえ……それがまだでして……この食事を終えたら職業紹介所に行こうかと……」
「そうですか」
ドロナがシューグに目配せをした。シューグは小さくうなずく。おそらくアリエスが風呂に入っている間に、何かしらの打ち合わせがあったのだろう。
おほんと一つ咳払いをして、シューグが改まった様子でアリエスに言った。
「アリエスさん、ものは相談なんだが……」
「なんですか?」
「実はつい先日メイドが一人辞めてしまってね、新しいメイドを探していたところなんだ」
「……!」
シャンディーが口を挟む。
「カレンさんだね。故郷の家族から帰ってきてほしいって言われたんだっけ?」
「ああ、そろそろ身を固めてほしいと言われたそうだ。それはともかく」
シューグはアリエスに言った。
「そういうわけでアリエスさん、もし貴方がよろしければでいいんだが、ここでメイドとして働いてほしいのだが……どうかな?」
「……っ!」
父親の提案にシャンディーがうれしそうな声を上げる。
「わあーっ! お父さんないすぅ! たまには良いこと言うじゃーん!」
「はは……いつも言ってると思うんだけどなぁ……」
それからシャンディーはアリエスの膝に手を置いて。
「アリエスお姉さん、ここに来てよ! それならずっと一緒にいられるよ!」
「さすがにずっと一緒というわけには……自宅から通わなければならないし……」
ドロナが口を挟む。
「そのことなら、うちでは住み込み制を導入していますので心配いりませんよ。我が家で働いている多くの者がそれで働いています。もちろん、どうしても自宅から通いたいというのであれば別ですが」
「住み込み……」
仕事があるだけでなく、この豪華な家の一室を借りれるということ。
シューグが言葉を続ける。
「我が家の家事全般をこなすのだから、無論給料も弾ませてもらう。まあ、最初は見習いからになるが、仕事を覚えて色々なことが出来るようになっていけば、その分役職や給料も上げさせてもらうつもりだ」
「…………」
給料も良く、技能次第で昇格や昇給も見込める。また転生前の自宅でメイドの仕事を間近で見ていたし、それこそ父親の事業が上手くいっていなくメイドや執事の数が少なかったときは、アリエス自身も家事の手伝いをしていた経験もある。
まさにいまのアリエスにとっては、うってつけの職だった。
「あの……こんなわたしで良ければ、よろしくお願いします……!」
頭を下げるアリエスに、
「それは良かった。これからよろしく、アリエスさん」
「よろしくお願いしますね、アリエスさん」
シューグとドロナは顔を綻ばせて、シャンディーもアリエスの手を取って心からうれしそうな顔になる。
「わぁーい! これからずっと一緒だねアリエスお姉さん!」
「そうね。よろしくシャンディーさん」
「シャンディーでいいよ! アリエスお姉さんはわたしの特別なんだから!」
シャンディーの発言に少しだけどきりとして、アリエスは室内にいたメイドや執事達を見回す。彼らもまたうれしそうに柔和な顔つきをしていて、シャンディーの言うことを気にしていないようだった。
それを見て、このかたがたは本当に良い人達なんだなと再認識する。そしてアリエスはシャンディーへと微笑みを返す。
「ありがとう、これからよろしくね、シャンディー」
「うん! よろしくアリエスお姉さん!」
こうして、アリエスはシューグ家の見習いメイドとして働くことが決まったのである。
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