表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】 学園の聖女様はわたしを悪役令嬢にしたいようです  作者: ナロー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/120

19 ほんのりと赤く


 たとえ水に濡れてしまったとしても、たとえ一万ゴールドという貴族からすれば端した金額だとしても、いまのアリエスにとっては大金で生活に必要な大切なお金だった。取り上げられてしまうわけにはいかなった。


「お願いします。それを返してください。わたしにはそのお金が必要なんです。それがないと……」

「駄目です。こんなものを貴方に渡したのが知られたら、それこそ私達は恥をかいてしまうでしょう。なんてことをしているのだと」

「で、ですが……っ」


 そのとき、会話をそばで聞いていたシャンディーが口を挟んできた。わずかに母親をジト目で見るようにして。


「お母さん、もしかしてわざとやってるの? アリエスお姉さんと会話が噛み合っているようで、絶妙にずれてる気がするんだけど」

「「え……?」」


 アリエスとドロナが同時に疑問の声を漏らす。今度はシューグがやれやれと首を振った。


「すまないね、アリエスさん。妻は洞察力は良いほうなんだが、それ故に言葉足らずだったり必要な説明をうっかり忘れてしまうことがあるんだ」

「どういうことですか……?」

「つまりね……ドロナ、その手に持っているものを早くアリエスさんに見せてあげなさい」


 ドロナの手はテーブルの下にあり、対面に座るアリエスからは見えなかった。テーブルの先端に座るシューグからは角度的に見えていたようで、だからこそ彼には二人の会話のもどかしさが手に取るように分かったのだろう。

 ドロナがテーブルの下、自身の膝に置いていた手をテーブルの上に出す。その手には一通の封筒があり、彼女はこげ茶色の紙幣の隣にそれを置いた。


「それは……?」


 尋ねる声をつぶやくアリエス。シューグはドロナにうなずいて、ドロナは少し決まり悪そうにしながら。


「こほん……代わりのお金です。濡れてしまったお金のままでは使えませんし、銀行へ交換に行く手間もありますから。代わりの一万ゴールド紙幣をこちらで用意しておきました」

「あ……」

「こちらの濡れた紙幣に関しては私達が引き取って、あとで銀行で交換しておきますのでご心配なく。説明が足りず、勘違いさせてしまったみたいですね」


 つまりはそういうことだった。代わりのお金を渡すという説明を忘れてしまったドロナと、取り上げられると早とちりしてしまったアリエス……そのせいで二人の会話はどこかずれたものになってしまったのだ。

 早とちりした自分が恥ずかしくなって、アリエスは頭を下げてしまう。


「も、申し訳ありません! わたし、ついてっきり……」

「いえ、説明が不足していた私の落ち度でもあります。確かに思い返せば、あの言葉だけ聞いたらそういうふうにも聞こえてしまいますものね。だから、顔を上げてください」

「ほ、本当にすみません……」


 アリエスは顔を上げて、おそるおそるドロナのほうを見る。ドロナは顔を少しだけ背けていたが、その頬や耳は恥ずかしそうに、ほんのりと赤くなっていた。

 鏡がないのでアリエス自身には分からないが、彼女もドロナと同じような状態になっていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ