18 没収させてもらいます
「ふむ。メーク君、彼女に水を持ってきてあげなさい」
「かしこまりました」
シューグに言われたメイドが台車に置かれた水差しとコップを取り、アリエスの前にそのコップを置いて水を注いでいく。とくとくと静かな音で注がれる水は、とても綺麗で澄んでいた。
「どうぞ、アリエスさん。その水を飲んで落ち着いてください」
「……ありがとうございます……」
シューグに促されて、アリエスは水に口をつける。ただの水、そのはずなのに、非常に美味しく、混乱していた気持ちが鎮まっていくようだった。
「どうですか? 落ち着きましたか?」
「……はい……おかげさまで……」
「それは良かった」
まさか、こんな人達がいるなんて。
アリエスがそう思うなか、シューグは再び席につき、ドロナも続いて席に座り直す。まるで何事もなかったように、メイドや執事は自分の持ち場に戻り、コックは運んできた料理をテーブルに並べていった。
「ところでアリエスさん、実は貴方の服を洗濯しようとしたときに見つけてしまったのですけど……」
ドロナが口を開き、テーブルの上に小さな長方形のものを置く。それはこげ茶色をしていて、よれよれにしわが出来ていた。
「あ……」
アリエスはその正体にすぐに気付く。さっき着ていた服のポケットに入れていた、女神からもらった紙幣の一枚だった。朝食やその他必要なものを買うために、一枚だけ封筒から取り出して持っていたものだ。
「考えてみれば、当たり前ですよね。川に入って濡れてしまったのなら、持っていたものもそうなって当然です」
硬貨であれば、濡れても乾かせば使えるだろう。しかし紙幣となれば、全体が完全に濡れてしまっては、乾かしたとしても使えるようになるかは難しかった。
一応、銀行に持っていけば別の紙幣と交換はしてくれるかもしれないが。少なくとも、それまではこの紙幣を使うのは憚られることになる。
「濡れてしまっていたせいで判別が難しくなっていますが、これ、一万ゴールド紙幣ですよね?」
「はい……」
すでに水気は取ってあるらしいが、それでも完全には乾いていなく、こげ茶色に見えたのはそのせいだった。大切な資金であり、交換するまで使えず、自宅にある残りの紙幣を取りに戻るまで買い出し出来ないのは、地味に痛手であった。
「あの、わざわざ持ってきていただいてありがとうございます。銀行への交換は自分でしておきますので……」
「何を仰っているの?」
「え……?」
「こんなものを貴方に渡すわけにはいかないでしょう? これは没収させてもらいます」
「そ、それは困ります……!」




