119 いつもとは少し違う
……数日後。学園にて。廊下を一人の女子生徒が歩いており、彼女の姿を見てヒソヒソと周りの生徒達が小声を交わす。
「……見て、ベリーよ……」
「……あんなことがあったのに、懲りずに学園に来るなんてね……」
「……ちょっと、見すぎたら因縁つけられちゃうわよ……」
ギロリとベリーが睨む視線を向けて、彼らが慌てて顔を背けて別の話題を話し始める。因果応報。自業自得。ベリーはイラついたが、それ以上は構わずに廊下を歩き続けた。
アリエスが教室のなかに入ったとき、ベリーは自分の席に一人でいた。以前のように取り巻き達に囲まれることはなく、しかし無視されるわけでもなく、あるいは畏怖の像のように注目されている。
ベリーは彼らの視線やヒソヒソ声を無視して、頬杖をついて窓の外に目を向けていた。退屈そうな、つまらなそうな顔だった。
アリエスはベリーの元まで歩いていく。ベリーの隣が自分の席だからというのもあるが、彼女と話をするためでもあった。
「ベリーさん」
「…………」
声をかけると、ベリーはちらりとアリエスのほうを見たあと、また窓の外に目を戻した。なんだアンタか、何の用、ワタクシを笑いに来たの? 彼女はそう言っているようだった。
後頭部を見せるベリーにアリエスは続ける。
「先日も申しましたが、わたしはベリーさんにお借りしたお金を返すつもりです。時間はかかりますし、ベリーさんには何のことだか分からないでしょうけど……」
「……思い出したわ」
「……え……?」
「でも、謝るつもりはないからね」
ベリーは窓外を眺めながらそれだけ言うと、また黙り込んでしまう。たったそれだけだったが、全てを察したアリエスは真面目な顔で。
「……構いません。わたしがすることは変わりませんから」
それだけ答えて、自分の席に座った。
朝礼が鳴る。教室に来た担任がホームルームを始める。
いつも通りの、しかしいつもとは少し違う学園の日常がすぎていく。
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