114 貴方達なら
「うーん、ちょっと困ったわねぇ」
コレート夫人が言う。言葉としてはそう言っているのだが、その声音はどこか面白そうにしていて余裕が感じられてはいるのだが。
その夫人がシャンディーのほうをちらりと見た。
「貴方、ドロナの娘よね?」
「え、あ、はい……っ」
二人は何回か面識がある……とはいえ、あくまで顔見知りという程度で、親しく会話をしたことはなかった。コレート夫人がベリーの親戚だということも、シャンディーはいま知ったばかりだった。
「やっぱり、ドロナの娘を見殺しにしたら、ドロナが怒るわよねぇ。それはそれで見てみたい気もするけど……」
夫人は今度はアリエスやメークのほうを見ると。
「というわけで、アリエスさんにメイドさん、わたくしの代わりにそいつをやっつけてくださらないかしら? わたくしはこの子達を守っておきますから」
「「…………っ」」
夫人の言葉はお願いや頼みというよりは、貴方達なら出来るわよねという悪戯心染みた声音が込められていた。わたくしがあそこまで弱らせたのだから、あとは貴方達でも大丈夫よね……そんな観戦者のような言い方だった。
コレート夫人が実際に何を考えていたのかは、他の者達には分からない。アリエス達の戦いを面白く見てみたいと思っていたのかもしれない。
しかしだとしても、メークもアリエスも言われた瞬間に暴君のほうへと駆け出していた。
「『プレートブレード=アドスリー』!」
手にしていた魔法の刃をさらに長く……およそ三メートルほどにして、メークが暴君の足へと斬りかかっていく。
ズバズバズバズバ……ッ! 目にも止まらないようなメークの回転斬り。さらに暴君が復活したことを視認したらしく、遠方から魔法の矢が再び暴君の身体へと直撃していく。
『……ッ……』
だが、それでもまだ暴君は倒れない。メークと執事長、および先ほどのコレート夫人の攻撃によってダメージは確実に受けているはずだが、それでもまだ倒すには至っていない。
暴君が再び腕を振り上げた。その腕もまた黒ずんでいた表層が剥がれ落ち、内部にあった炎が垣間見えていた。その腕を、うるさいハエや蚊を叩き潰そうとするようにメークへと振り落とす。
「メークさん!」
「く……っ……」
メークは回避しようとするが、巨人との体格差があまりにもありすぎるせいで回避が間に合わない。魔法の矢も間に合っていない。




